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放牧と牛肉中のパストラルフレーバーの関係


[要約]
  放牧による牛肉のパストラルフレーバー関連成分をSPME(DVB/CAR/PDMS)により簡便に採取し、GCMSにより検出することが出来る。この中で、Phyt-1-eneは、放牧後の稲ワラ給与期間と高い逆相関があり、終牧5か月後でもPhyt-1-eneは検出可能である。
[キーワード]
  放牧、牛肉、フレーバー、肉用牛、畜産物・品質
[担当]東北農研・畜産草地部・畜産物品質制御研究室
[連絡先]電話019-643-3541、電子メールakiraw@affrc.go.jp
[区分]東北農業・畜産、畜産草地
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  食料自給率の向上、資源循環型農業、環境保全型農業といった農業生産システムが求められる中で、食肉の生産においても放牧地などの地域資源を有効に活用することが重要である。しかしながら、牧草を多給した牛肉は、パストラルフレーバーと呼ばれる香りが付くことが知られている。フレーバー抽出は煩雑または大がかりな装置を必要とするが、近年、開発された固相微量抽出(SPME)法は操作が非常に簡便で様々な分野で応用されている。そこで、本手法を用いてパストラルフレーバーを分析することを試み、フレーバー関連物質の挙動を明らかにすることを目的とする。
[成果の内容・特徴]
 
1. SPME(DVB/CAR/PDMS)ファイバー(スペルコ社製)を用いることで牛肉のパストラルフレーバー物質(phyt-1-ene, phyt-2-ene, phytane)を抽出し、GCMS-SIM分析により定量することが可能である(図1)。
2. パストラルフレーバーは、放牧終了後の稲ワラ給与により減少したが、このうちphyt-1-eneは稲ワラ給与期間と高い逆相関が認められ、放牧を確認するのに有効である(図3)。
3. 終牧後5か月間稲ワラを給与して生産された牛肉では未放牧の牛肉との差異を官能的に区別することは出来ないが、phyt-1-eneは検出される(図3)。
[成果の活用面・留意点]
 
  未放牧の稲ワラ給与牛ではphyt-1-ene 含量は0.25ppM(内標準のBHTを基準として)以下であるため、この物質を指標として牛肉から飼養条件を推測することも可能である。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 放牧を利用した肥育が牛肉の品質に及ぼす影響の解明
課題ID: 05-05-07-01-02-03
予算区分: 交付金
研究期間: 2001〜2003年度
研究担当者: 渡辺彰、樋口幹人、上田靖子