研究所トップ研究成果情報平成15年度

フェストロリウムにおける越夏性に関する選抜効果


[要約]
  Festuca属とLolium属の雑種であるフェストロリウムは、越夏性に関する変異が大きく、越夏後草勢により選抜が可能である。この越夏性の選抜により越夏後の乾物収量は有意に増加し、年間合計乾物収量も増加する。
[キーワード]
  イネ科牧草、フェストロリウム、飼料作物育種、越夏性、選抜効果
[担当]東北農研・畜産草地部・牧草育種研究室
[連絡先]電話019-643-3563、電子メールyonemaru@affrc.go.jp
[区分]東北農業・畜産、畜産草地
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  Festuca属とLolium属の属間雑種であるフェストロリウムは、東北地域において環境適応性と嗜好性に優れた有望草種に期待されている。しかし、本草種は越夏性が高いFestuca属と初期生長に優れ越夏性がやや低いLolium属の雑種であるため、越夏性に関して変異が存在する。そこで、越夏性と高い関連がある越夏後草勢について評価と選抜を行い、選抜効果を確認する。また、生産力を評価し初期生育との相互作用を調査する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 越夏性選抜後代の育成経過を図1に示す。試験に用いた品種エバーグリーン(EG)とタンデム(TD)の基礎集団における2001年の越夏後草勢(評点値、良:9〜不良:1)は、枯死(評点1)及び極めて生育不良(評点2)の個体をそれぞれ29%及び10%含むなど変異が大きい。なお、品種の平均値は、EG及びTDにおいてそれぞれ3.76及び4.73であるが、後代検定で用いる選抜個体の平均値はそれぞれ6.00及び5.83となり、1ポイント以上の選抜が可能である(図2)。
2. 2003年における後代検定の結果、EGから選抜した8個体の多交配後代(PT-EG8)とTDとパウリタから選抜した8個体によるTD由来の多交配後代6母系(PT-TD6)における平均値は5.63と6.47であり、同年における親品種の越夏後草勢(EG平均値:4.57及びTD平均値:5.32)と比べて有意差が認められる(表1)。また、これらの数値より推定される越夏性の遺伝率(h2)は、それぞれ0.48及び0.79(参考値)である(表1)。
3. 2001年において越夏後草勢により選抜した個体(EG平均値:5.58及びTD平均値:5.62)で放任受粉させ、EG11系統(YT-EG11)及びTD14系統(YT-TD14)を作出して生産力検定を行った結果、選抜系統は親品種と比較して、2003年の越夏後収量(3及び4番草)が有意に高く、選抜効果が認められる(表2)。また、1番草の収量は減少していないことから、越夏性と初期生長性は独立した選抜が可能である。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 属間雑種フェストロリウムにおける越夏性の特性や遺伝様式に関する重要な知見であり、選抜時の有効な情報となる。
2. 冠さび病抵抗性などの他形質の選抜効果による相加・相乗作用や環境との相互作用などについては今後調査する必要がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 寒冷地水田に適応するフェストロリウム優良品種の育成
課題ID: 05-05-02-01-05-03
予算区分: ブラニチ3系
研究期間: 2003〜2003年度
研究担当者: 米丸淳一、上山泰史、久保田明人