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[背景・ねらい] |
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近年、ポアオン法で投与できる寄生虫駆除薬が広く利用されつつある。イベルメクチン等の製剤有効成分は糞の中に排泄されるため、糞を餌とする昆虫の生育が抑制され、糞分解が妨げられる可能性が指摘されている。しかし、国内では食糞性昆虫に対する影響はほとんど調べられていない。そこで駆虫薬を投与した牛の糞の糞虫に対する誘引性と、幼虫の生存率に及ぼす影響を明らかにする。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
牛に投与した駆虫薬に含まれるイベルメクチンは、翌日には糞中に排泄され始め、最も濃度が高くなるのは、投与後3日目の場合が多い。その後、濃度は次第に低くなる(図1)。 |
2. |
駆虫薬を投与した牛から採取した糞を誘引源とした糞トラップで5属16種の糞虫を採集した。誘引性は種によって異なるが、カドマルエンマコガネ以外の7種は、駆虫薬投与後3日目、または1日目の糞に多く集まる(表)。 |
3. |
幼虫のための餌として地下に糞を埋め込む糞虫は、糞分解に重要な役割を果たしていると考えられるが、それらの種のうち、オオフタホシマグソコガネとツノコガネは、駆虫薬を投与した牛の糞で産卵させても、産卵数には影響しない。しかし、駆虫薬投与後1、3日目の糞を与えてオオフタホシマグソコガネを飼育すると、幼虫はすべて死亡する(図2)。ツノコガネでも1、3、7日目の糞を与えた幼虫の生存率は、対照区に比べ、有意に低くなる(図3)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
イベルメクチン濃度の高い糞による成虫への誘引効果、及び幼虫の生存率に与える影響は、種によって異なる。 |
2. |
駆虫薬投与を適切に行うには、駆虫薬の経済的効果の他、草地及び周辺環境への影響等を考慮する必要があるが、本成果はその参考となる。 |
3. |
最近の環境影響評価基準ガイダンス(案)では、駆虫薬の承認申請に糞虫の試験も必要になるケースが示され、国際的な標準試験法の開発が進められるなど、駆虫薬の環境負荷に対する評価は厳しくなりつつある。本成果はそれらの参考となる。 |
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