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| [背景・ねらい] |
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ポアオン法(滴下塗布による方法)で投与できる牛用駆除薬が広く利用されつつある。駆虫薬成分は大部分が牛糞の中に排泄され残留するため、それを分解する昆虫等の生育が抑制される一方、同じく糞を餌とする家畜害虫に対しては防除効果が期待される。放牧地で牛の眼病媒介や家畜における不快害虫であるとともに、放牧牛糞の分解に関与しているノイエバエに対して、現在、普及している主な駆虫薬であるイベルメクチン製剤とモキシデクチン製剤の産卵および成育阻害効果を明らかにした。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
ノイエバエの産卵数は、イベルメクチン製剤をポアオン処理(イベルメクチンとして500μg/牛重1kg)した牛の糞と無処理牛の糞で差はなかった(Kruskal-Wallis test、p>0.19)。しかし、駆虫薬処理後、1日および3日目の牛の糞に産卵された卵は羽化には至らない(図1)。 |
| 2. |
ノイエバエの羽化数は、糞内のイベルメクチン濃度が0.001ppmになるように駆虫薬を添加した糞と対照糞では差がないが、0.01ppm以上添加した糞では全く羽化しない。モキシデクチンでは、0.01ppmでは対照糞と差はなく、0.1ppmで羽化は完全に抑えられる(図2)。 |
| 3. |
放牧牛にイベルメクチン製剤とモキシデクチン製剤(モキシデクチンとして500μg/牛重1kg)をポアオン法で投与し、その1〜35日後の所定日に排泄された糞にノイエバエ卵を接種すると、イベルメクチンでは投与後14日目までの糞(糞内イベルメクチン濃度、0.0079ppm以上)では全く羽化が見られず、21日目の糞(同、0.0034ppm)でも生育は阻害されるが、28日後には回復する(図3)。モキシデクチンでは3日目だけは強く阻害されるが、それ以外の期間では生育阻害は見られない(図4)。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
ノイエバエの発生制御法開発に資する。 |
| 2. |
駆虫剤の使用にあたっては、寄生虫防除の経済効果以外にも牛糞の分解に寄与する動物に及ぼす影響等も考慮し判断することが望ましい。本成果はその判断に資する。 |
| 3. |
牛糞内残留濃度を測ることにより、ノイエバエに対する駆虫薬成分の有効濃度から、発育阻害効果を予測できるが、残留パターンは一定でないことに留意する必要がある。 |
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