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成熟種子胚軸を用いた遺伝子導入方法および遺伝子導入ダイズの作出方法


[要約]
  ダイズの成熟種子胚軸の茎頂分裂組織周辺部および胚軸切断面の表皮細胞周辺部において、アグロバクテリウムを用いることにより、遺伝子導入細胞を得ることができる。それらの細胞から不定芽を経て遺伝子導入ダイズの再分化が可能である。
[キーワード]
  ダイズ、形質転換、アグロバクテリウム、TDZ
[担当]東北農研・作物機能開発部・生物工学研究室
[連絡先]電話019-643-3698、電子メールyoshidat@affrc.go.jp
[区分]東北農業・生物工学
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  ダイズの画期的品種の育成において、アメリカを中心とした欧米企業は自ら特許化した遺伝子導入技術(未熟種子および発芽種子の子葉および子葉節を用いる方法)を用い、遺伝子組み換え作物を実用化している。一方、わが国では、ダイズにおいて、遺伝子導入技術に関する基本特許を持っておらず、開発は大幅に立ち遅れている。そこで、新規なダイズの遺伝子導入方法及び遺伝子導入個体の作出方法を開発する。
[成果の内容・特徴]
 
1. ダイズ成熟種子を水で浸漬し、胚軸を取り出す。胚軸の上部1mm切片を用いる(図1)。
2. ベクター(Gus遺伝子等目的遺伝子+ハイグロマイシン耐性遺伝子)を導入したアグロバクテリウム液と切片を混和する (図1)。
3. 切片を10℃で1日、22℃で3日間、寒天培地でアグロバクテリウムと共存培養することにより、胚軸の茎頂分裂組織周辺部および胚軸切断面の表皮細胞周辺部より遺伝子導入細胞を得る(図1図2)。
4. カルベニシリンで除菌後、選抜マーカーとしてハイグロマイシンBを含んだ培地上で、遺伝子導入細胞を選抜し、同時に、不定芽を形成させる。この際、遺伝子導入細胞部位が4μM チジアズロン(TDZ)を加えたB5培地に接するように置床する(図3)。
5. ジベレリンA3(GA3)を含む培地で不定芽を伸長させる。さらに、インドール酪酸(IBA)を含む培地で発根を促す。無菌の培養資材に移植し、生長を進める。園芸培土に移植し、徐々に順化し、遺伝子導入ダイズを得る(図3図4)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 方法は、アグロバクテリウムを用いる点を除き、新規な方法で、特許審査中である。ダイズのアグロバクテリウム法に関しては複数の特許が米国の企業等で取得されている。
2. 従来法(パティクルガン−不定胚法)に比較して、遺伝子導入効率は劣る。
2. 遺伝子導入効率、不定芽形成効率に著しい品種間差が認められ、効率が低い品種(スズカリ、スズユタカ、タチユタ等)には適用が困難である。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 豆類の遺伝子導入系の確立
課題ID: 05-06-05-01-09-03
予算区分: 地域実用化
研究期間: 2002〜2003年度
研究担当者: 吉田泰二、藤郷誠
発表論文等: 1)吉田ら(2001)米国特許出願No.09/820,845
2)吉田ら(2001)平成12年度東北農業研究成果情報131-132
3)吉田(2002)Breeding Science 52:1-8