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[背景・ねらい] |
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パツリンはリンゴ果実に感染したPenicillium expansum等が生産するマイコトキシンであり、動物実験により消化管の充血、出血、潰瘍等の症状が認められている。2003年7月の第26回コーデックス総会においてパツリンの基準値として50μg/Lが採択された。海外のパツリン調査報告には高濃度を含む多くの検出例が認められるが、国内では主として外国産果汁を原料としたリンゴジュースのパツリン含量の報告はあるものの、リンゴの主産地である東北地域では生産地で製造されたリンゴジュースが産地直売施設で多数販売されており、パツリン含量の調査報告はない。
そこで、東北地域で販売されているリンゴジュース及びリンゴ果汁を原料とするジュースのパツリン含量を調査する。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
パツリン分析法のAOAC2000.02法(HPLC法)では、パツリンのピークは他ピークと良好な分離を示す(図1)。本分析法では、パツリンピークのS/N比の計算から定量限界(S/N比10)を10μg/L、検出限界(S/N比3)を4μg/Lとしている。なお、最終液量はAOAC2000.02法では1mLであるが、ここでは2mLとしている。 |
2. |
国産果実を原料としたリンゴジュースのパツリン含量は、ND(検出されず)が140点であったが、生産地が東北地域のもの3点から検出され、10μg/L、7μg/L、6μg/Lであった(図2)。10μg/Lの製品は別ロット品、同一製造者の製品にはパツリンは検出されていない。 |
3. |
外国産ではNDが39点であったが、6点にパツリンが検出されている(図3)。このうち15μg/Lの製品(オーストラリア産、ストレート果汁)については、別ロットではパツリンは検出されていないが、2銘柄(濃縮果汁還元)については、7μg/Lと9μg/L及び7μg/Lと6μg/Lと別ロットでも検出されている。残りの1点は9μg/Lである。 |
4. |
パツリンの分析に関し外部精度管理(proficiency testing, FAPAS)に参加し、分析値の信頼性の保証を受けている。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
2002年厚生労働省が決定した規制値、コーデックス総会で採択された基準値はいずれも50μg/Lであり、これを上回るパツリン含有量の製品は確認されていない。 |
2. |
収集したリンゴジュースは青森県産59点、岩手県産59点、秋田県産15点、山形県産6点、長野県産1点、国産との表示3点であり、外国産を原料とするもの(表示の無いものを含む)36点(33銘柄)、リンゴ果汁原料使用ジュースはいずれも表示が無く9点である。原料が東北地域のジュースの製造販売地は、青森県4市12町村、岩手県9市13町村、秋田県3市5町村、山形県2市1町にわたっている。 |
3. |
本結果は、我が国のリンゴジュース生産現場においてもパツリン生産菌が存在することを示すものであり、生産管理の徹底が必要である。 |
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