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イネの真性抵抗性遺伝子型と圃場抵抗性程度の推定に有用な病原性の幅の広いいもち病菌株


[要約]
病原性の幅の広い3菌株のイネいもち病菌を得た。これらの菌株を用いることにより、イネ品種・系統の真性抵抗性遺伝子型をより正確に推定できる。また、温室内での圃場抵抗性程度の推定にも利用できる。
[キーワード]
  イネいもち病、レース、真性抵抗性遺伝子型、圃場抵抗性程度
[担当]東北農研・水田利用部・水田病虫害研究室
[連絡先]電話0187-66-1221、電子メールtoketa@affrc.go.jp
[区分]東北農業・生産環境、共通基盤・病害
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
イネの真性抵抗性遺伝子型の推定を目的に現在使用されるイネいもち病菌株のみでは、近年育成されている飼料イネや外国イネ等の遺伝子型を推定できない場合がある。一方、圃場に分布するいもち病菌レースに対し抵抗性のイネでは圃場抵抗性程度を推定できず、室内検定を行う必要が生じる。そこで、これらのイネ品種・系統の真性抵抗性遺伝子型と圃場抵抗性程度を推定するために、より病原性の幅の広いレースの菌株を得ることを目的とする。
[成果の内容・特徴]
 
1. 病原性の幅の広いイネいもち病菌株として、Spr-52(レース577.1)、Spr-111(同777.1)及びSpr-777.3(同777.3)の3菌株を選定した(表1図1図2)。
2. これらの菌株は、いずれも胞子形成能が高く、病原性が安定し、菌叢の生育が良好で、菌叢の変異もほとんどない。
3. 飼料イネ系統「奥羽飼387号」の真性抵抗性遺伝子型は、従来の菌株のみでは明らかにできないが、Spr-52及びSpr-111菌株を用いることにより‘Pita-2’が推定される。また、Spr-777.3菌株を用いた温室内検定による本系統の圃場抵抗性程度は、葉いもちはやや弱、穂いもちは弱と推定される(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 得られた菌株は、イネ品種・系統の保有するいもち病真性抵抗性遺伝子型を推定するために活用できる。
2. Spr-777.3菌株は、日本国内で明らかにされている‘Pit’以外の真性抵抗性を持つ品種・系統の圃場抵抗性程度を室内検定で推定する場合に利用できる。
[具体的データ]
 

[その他]
研究課題名: 同質遺伝子系統の安定活用モデルによる効果的利用技術の開発
予算区分: ブラニチ5系
研究期間: 2003〜2005年度
研究担当者: 芦澤武人・善林 薫・片岡知守