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塩化ナトリウム添加及び遮根シート利用による良食味トマトの養液栽培


[要約]

 やし殻繊維を培地において、培養液に塩化ナトリウムを添加してEC3.0dS/mとすると、収量は慣行の65%前後、糖度(Brix値)7程度の果実が生産できる。また、栽培ベッド内の株元容積を1リットル程度に制限すると、果実糖度がより高くなる傾向がある。

[キーワード]

トマト、養液栽培、糖度、塩化ナトリウム

[担当]宮城農園研・園芸栽培部・野菜チーム
[連絡先]電話 022-383-8132、電子メール marc-kk@pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・野菜花き
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 養液栽培による高糖度トマトの生産は培養液に塩化ナトリウムなどの塩類を添加したり、根圏の容積を極端に制限して、強い水分ストレスを与え、糖度10程度の果実生産を目的としているものが多い。この方法では草勢の維持が難しく、1〜3段花房まで収穫する短期どり・密植栽培となっており植え替えや育苗の負担が大きい。また、果実が小さくなり収量が半分以下と大きく減少する。収量の減少に見合うだけの価格で取引されるとは限らないため、あまり取り組まれていない。そこで、高糖度ではなく、良食味トマトの評価が得られる糖度7を目標として、長段どりが可能で収量を大きく減じることがない栽培方法を確立する。
[成果の内容・特徴]
1. 定植後から塩化ナトリウムを添加して、培養液のECを少しずつ高める。肥料成分のECと塩化ナトリウムを添加した培養液のECは、第3花房開花期までにEC3.0dS/m程度となるようにし、その後も同ECで管理する(表1)。
2. 商品果収量は株当たり3kg程度(半促成・7段摘芯栽培)で、塩化ナトリウムを添加しない場合のおよそ65%程度である(図2)。
3. 栽培ベッド上に遮根シートを埋設し培地を株元とその周囲に区画し(株元の容積は1リットル)、根域の容積を制限すると(図1)、水分ストレスの影響が大きくなり、果実糖度がより高くなる傾向がある。
[成果の活用面・留意点]
1. 肥料成分のECは1.2〜1.8dS/mとし、慣行に準じる。塩化ナトリウムの添加濃度は草勢や収穫果の果実品質をみながら加減する。
2. 給液量に対する排液の割合は20〜30%となるように給液量を調節する。
3. 塩化ナトリウムは肥料原液タンク(硝酸石灰のタンク)に10〜20%(w/v)の範囲で混合しておく。
4. 培養液中の塩化ナトリウム濃度は1000〜2000ppmとなるが。海水中の塩化ナトリウム濃度(2.7%)の数%であり、ハウス外へ排水しても環境に与える影響は少ないと考えられる。
5. 高温の時期は糖度、酸度があがりにくい。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:水分ストレス制御による高品質果実生産型養液栽培技術
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:岩崎泰永、戸祭 章、漆山喜信