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側面開放部を確保した空気膜二重構造パイプハウスの微気象


[要約]

 パイプハウスの屋根面を空気膜二重構造とすることによって、開閉式の保温カーテンと同等以上の保温性となる。また、巻き上げ式の側面開放部を被覆面積の35%以上とすることで高温期のハウス内気温をほぼ外気温程度とすることが可能である。

[キーワード]

パイプハウス、空気膜二重構造、換気効率、保温性

[担当]宮城農園研・園芸栽培部・野菜チーム
[連絡先]電話 022-383-8132、電子メール marc-kk@pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・野菜花き
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 二重に展帳したPOフィルム間に空気を吹き込んで空気膜二重構造としたハウス(空気膜ハウス)は、低温期の保温性がよく、構造が簡単で耐風性も高いといわれる。一方、高温期に利用するためには開放部をできるだけ多くして昇温抑制を図る必要がある。
 そこで、本研究では、天面部を空気膜二重構造としたパイプハウスについて、低温期における保温性能を保ちつつ、高温期のハウス内気温の上昇を抑制できる側面開放部の大きさを検討し、周年利用が可能な効率のよいパイプハウスの構造を提案する。
[成果の内容・特徴]
1. 間口6.3m軒高3.1mのハウスを例とした場合の基本構造は以下のようになる。
1) 屋根面は0.075mmの農POフィルムを2枚重ねてビニペットなどで固定展帳する。低温期は、小型ブロワー(30〜50W)でその間に空気を送り込み、空気膜を形成し断熱層とする。内部の圧力は水柱で10mm程度とする。保温が不要な時期はブロワーを止める(図1)。
2) 側面開放部の大きさは180cm程度とし、肩部で上下2段に分割する(図1)。この場合、被覆面積に対する側面開放部分の比率は35%となる。
2. 低温期には、空気膜ハウスでは夜間の最低気温が対照ハウスよりも1〜2℃高く推移し、ポリエチレンフィルムを用いた開閉式の天井保温カーテンよりも保温性が高い(図2)。
3. 高温期には、ハウス側面を肩部より上部まで巻き上げ、側面開放部比率を35%とするとハウス内気温は外気温とほぼ同程度となる(図3a)。この場合には、側面開放部分がハウスの肩部までの標準的なハウス(側面開放部比率17%)より空気膜二重構造部分の面積が小さくなるが、保温性に大きな差はない(図3b)。
4. 農POフィルム0.1mm1枚展帳の通常ハウスの日射透過率は12月上旬の平均で74%、これに対して、農POフィルム0.075mm厚を2枚展帳した空気膜ハウスの場合は66%である。
[成果の活用面・留意点]
1. 低温期にはハウス側面の内側に保温用内張カーテンを設置する。
2. あらかじめ2枚のフィルムをシール加工してもらうと展帳作業がしやすい。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:四季成りイチゴの栽培技術確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:岩崎泰永、戸祭章、漆山喜信
発表論文等:岩崎・植野(2003) 園芸学会東北支部会平成15年度大会発表要旨 69-70