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イチゴ夏秋栽培における培地内通気が果実収量に及ぼす影響


[要約]

 高温期に、培地内に通気パイプを埋設しコンプレッサーで通気することによって、果実収量が増加する。

[キーワード]

イチゴ、夏秋栽培、培地冷却、通気

[担当]宮城農園研・園芸栽培部・野菜チーム
[連絡先]電話 022-383-8132、電子メール marc-kk@pref.miyagi.jp
[区分]東北農業・野菜花き
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 高温期の草勢維持・果実肥大促進方法として、培地内通気が果実収量に及ぼす影響について明らかにする.
[成果の内容・特徴]
1. 発泡スチロール製ベッド(図1上)において、培地内に深さ10cmのところに通気パイプを埋設し、コンプレッサーで日中(6:00から18時)通気すると、商品果収量は冷水処理と同程度まで増加する(表1)。冷水処理と通気処理を併用した場合にはどちらか一方のみを行った場合と果実収量は変わらない(表1)。
2. プラスチックフィルム製ベッド、不織布製のベッド(図1下)では発泡スチロール製の栽培ベッドと比較して培地内温度の日変化が大きい。果実収量は発泡スチロール製栽培ベッドの方が高い傾向がある(表1)。不織布製の栽培ベッドはプラスチックフィルム製の栽培ベッドよりも培地温が最大2℃程度低く推移する(図2)。不織布製の栽培ベッドに通気処理を行った場合には、対照と比較して、最大1℃、平均0.5℃程度培地温の低下がみられる。
3. プラスチックフィルム製ベッドの場合は、通気処理によって商品果収量は対照区に比べ、20%程度増加する。一方、不織布製のベッドの場合には通気処理を行わない場合でも、フィルム製ベッドの通気処理区と同程度の収量であり、また、通気処理を行う場合でも果実収量は対照と同程度であった。(表1)。
[成果の活用面・留意点]
1. 通気処理では栽培ベッドの長さに応じて、十分な能力のコンプレッサーを用いる。本試験では小型コンプレッサー(0.75kw、タンク容積7リットル、空気吐出量50リットル/分)を用い、モータ保護のために15分間隔でON/OFFを繰り返した。使用した通気パイプ(多孔質パイプ、商品名シーパーホース)からの空気吐出量は0.4リットル/分/m(カタログ値)。
2. 不織布製の栽培ベッドはベッド側面より培養液が蒸発する際の気化潜熱により、地温が低下する。今回の試験では冷夏のため判然としなかったものの、不織布など通気性のあるシートなどで栽培ベッドを構成し、培地内に通気処理を行うとさらに気化潜熱が増大し、地温を低下させる効果があると考えられる。
[具体的データ]

[その他]
研究課題名:四季成りイチゴの栽培技術確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:岩崎泰永、戸祭章、漆山喜信