研究所トップ研究成果情報平成19年度

中腸腺除去ホタテ貝残渣を添加した飼料による子豚の銅と亜鉛排泄量の低減化

[要約]

子豚期に、銅と亜鉛を添加せずに魚粉を中腸腺除去ホタテ貝残渣で代替した飼料を給与すると、銅排泄量は慣行飼料の8%まで、亜鉛は68 %まで低減し、発育は慣行飼料と同等である。更にフィターゼを添加すると、亜鉛は慣行飼料の33 %まで低減する。

[キーワード]

子豚期飼料、ホタテ貝、フィターゼ、銅、亜鉛

[担当]

青森県・農林総研畜試・家畜部・養豚担当

[代表連絡先]

電話0175-64-2231

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

子豚用飼料に成長促進を目的として配合されている銅と亜鉛は吸収率が低く、殆どが糞中に排泄され堆肥中に高濃度に残留する。このため、耕種農家による堆肥の積極的利用への弊害となっており、銅と亜鉛の低減化に向けた飼料給与技術の確立が必要である。そこで、産業廃棄物として処理されることも多いホタテ貝残査を飼料に混合し、子豚の発育に及ぼす効果を調査することにより銅と亜鉛の添加量を低減する飼料給与技術を確立し、廃棄物系バイオマスであるホタテ貝残渣と家畜排泄物の利用促進を図る。

[成果の内容・特徴]

  1. 日本飼養標準の要求量(銅と亜鉛を除く)を充足する子豚前期及び後期飼料を魚粉を用いて配合を設計し、その魚粉を中腸腺除去ホタテ貝残渣で代替して残渣飼料とし、更に、残渣飼料にフィターゼを添加して残渣+F飼料とし、銅と亜鉛の排泄量を調査する。また、無添加飼料に業界規制上限値まで銅と亜鉛を添加して慣行飼料とし比較する(表1)。
  2. 糞中銅濃度は、残渣および残渣+F飼料の給与により、慣行飼料に比べて8%まで低減し、無添加飼料と同等にすることができる(図1)。
  3. 糞中亜鉛濃度は、残渣飼料の給与により、慣行飼料に比べて68 %まで低減する傾向を示す。更に、残渣+F飼料では33 %へと低減し、無添加飼料と同等にすることができる(図2)。
  4. 子豚期の日増体量は、無添加飼料では慣行飼料よりも減少する傾向を示す。一方、残渣および残渣+F飼料では慣行飼料と同等な日増体量となり、銅と亜鉛無添加の影響を補うことができる(図3)。なお、飼料要求率は、いずれの飼料も同等である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 飼料の有害物質の指導基準により、当該残渣のカドミウムは2.5 ppm 以下のものを用いる。
  2. 当該残渣の配合量は、配合設計で得た魚粉割合の代替にとどめ、多量混合しない。
  3. 当該残渣を飼料目的で製造販売する場合、飼料安全法による届出が必要である。
  4. 本試験は、非遺伝子組替株由来のフィターゼを使用した結果である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
バイオマス添加飼料給与による子豚の発育性及び銅・亜鉛の動態
予算区分
国補、交付金、県単
研究期間
2004 年〜 2006 年
研究担当者
阿部則夫、小笠原清高