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リンゴ苗木における根頭がんしゅ病の予防対策
[要約]
リンゴ苗木の根頭がんしゅ病は、苗木の養成時又は定植時に根部をアグロバクテリウム・ラジオバクター剤の20倍希釈液に1時間浸漬処理して植え付けることで予防できる。
[キーワード]
アグロバクテリウム・ラジオバクター剤、リンゴ、根頭がんしゅ病、予防
[担当]
青森農林総研・りんご試・病虫肥料部
[代表連絡先]
電話0172-52-2331
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
2001〜2004年のリンゴ苗木養成圃場での実態調査により、リンゴ苗木の根頭がんしゅ病は発病苗率が2.3〜21.7%で、その被害樹の多くは廃棄処分されていることが明らかになった。本病の発生は穂木感染と土壌感染に起因し、穂木感染は健全母樹の育成・管理により被害を回避できる。しかし、土壌感染は有効な防除対策もなく、本病の被害が拡大する要因になっている。そこで、リンゴ苗木の養成時又は定植時における土壌感染による本病被害を軽減するために、アグロバクテリウム・ラジオバクター剤の予防効果を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 青森県内に分布するリンゴ根頭がんしゅ病菌(Agrobacterium tumefaciens)の生物型は8割以上がbiovar 2 である(表1)。
- アグロバクテリウム・ラジオバクター剤はbiovar 1 、2 のいずれの病原細菌に対しても、感染予防の効果が高い(表2、3)。
- アグロバクテリウム・ラジオバクター剤の希釈液は、数回、繰り返して使用しても感染予防効果は低下しない(表4)。
[成果の活用面・留意点]
- 実際の使用は以下の手順で行う。
- リンゴ苗木の根部を水洗いして、土を取り除く。
- リンゴ苗木の根部及び接木部位を観察し、がんしゅ組織のみられない健全苗を選ぶ。
- リンゴ苗木の根部をアグロバクテリウム・ラジオバクター剤の20倍希釈液に1時間浸漬し、根部が乾かないうちに速やかに植え付ける。
- 30ℓ容バケツで20ℓの薬液を調合すると、1年生のリンゴ苗木では一度に約20 本の根部浸漬処理が可能である。
- 紋羽病対策における苗木消毒剤との併用処理による影響が明らかでないので、本剤を使用する場合は紋羽病の苗木消毒は行わない。
- 秋植えでの防除効果が明らかでないので、当面は春植えの使用に限定する。
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- 生物農薬を用いたリンゴ根頭がんしゅ病の効果的防除技術の開発
- 予算区分
- 受託(高度化事業)
- 研究期間
- 2005 〜 2007 年度
- 研究担当者
- 福士好文、對馬由記子、赤平知也、山本晋玄、雪田金助
- 発表論文等
- 福士ら(2007) 日本植物病理学会報73(3):227