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リンゴ品種の果皮アントシアニン蓄積能力の比較

[要約]

リンゴ品種の果皮アントシアニン含量は、赤色の品種間で5倍程度の差が認められ る。黄・緑色品種は、無袋栽培ではアントシアニンをほとんど蓄積しないが、有袋栽培す るとアントシアニン含量が増加し、赤色品種の「国光」と同レベルに達する品種もある。

[キーワード]

リンゴ、着色、アントシアニン、有袋栽培

[担当]

青森農林総研・りんご試・育種部

[代表連絡先]

電話0172-52-2331

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

リンゴの果皮色は主にRf 遺伝子座によって支配され、赤色が黄色に対して優性である。 しかし赤色品種の間にも着色の難易があり、栽培管理に多大な労力を要する「ふじ」に代 表される難着色性の品種がある。一方、遺伝的には黄色品種でありながら「陸奥」は有袋 栽培されてピンク色の品種として流通する。果皮の着色特性は商品価値に直接影響を与え る重要形質であり、リンゴ育種上の基礎的情報を得るために、代表的な品種について袋か けの技術を利用して果皮のアントシアニン蓄積能力を比較する。

[成果の内容・特徴]

  1. リンゴの着色には光が必要で、三重袋で遮光した条件下ではRf 遺伝子型に関わらずア ントシアニンを果皮に蓄積しない(図1:有袋果2、アントシアニンデータは省略)。
  2. 通常の無袋栽培条件で、赤色品種はアントシアニンを蓄積するが、その量は品種によ って大きく異なり、難着色性の「国光」と着色が良い「マキ20」では5倍の差がある (図2)。緑・黄色品種にも陽向面が着色するものがあるが(図1:無袋果)、アント シアニン含量は赤色品種に比べて明らかに少ない(図2)。
  3. 赤色品種間のアントシアニン含量の差は、Rf 遺伝子型のホモ/ヘテロ(AA/Aa)とは相 関がなく(図2)、着色の難易には他の遺伝子座が関与していることが示唆された。
  4. 有袋栽培(幼果期に被袋して収穫の1〜2ヶ月前に除袋して日光に当てる)を行うと、 一般に緑・黄色品種も着色し、アントシアニンを蓄積する(図2)。
  5. 特に「グラニースミス」や「印度」は有袋栽培で顕著に着色し(図1:有袋果1)、 アントシアニン含量は赤色品種の「国光」と同レベルに達する(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 有袋栽培における着色程度は、袋の種類、袋かけや除袋の時期、さらに除袋後の天候 等によっても大きく左右されるため、アントシアニン蓄積能力の調査には、各品種の特 性と環境(日照、気温など)を考慮する必要がある。
  2. 本試験結果は青森県藤崎町で慣行栽培した試験樹の3カ年の調査に基づくものである が、リンゴ品種の着色は地域によっても大きく異なる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
リンゴのアントシアニン集積に関与する遺伝子座の解明
予算区分
交付金プロ( 二次代謝産物)
研究期間
2004〜2006 年度
研究担当者
深澤(赤田)朝子、工藤剛、今智之、佐藤耕