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リンゴの果皮アントシアニン蓄積に関するQTL マッピングと受光環境の影響
[要約]
リンゴ系統の果皮アントシアニン蓄積能力は、基本的な果皮色(赤/黄)を決定するRf 遺伝子座と、複数のマイナーなQTL によって決定される。受光環境によっては、特定のマイナーQTL の寄与率が増大し、Rf
遺伝子座の支配力が相対的に減少する。
[キーワード]
リンゴ、アントシアニン、着色、QTL 解析、育種
[担当]
青森農林総研・りんご試・育種部、同・グリーンバイオ・遺伝子工学研究部
[代表連絡先]
電話0172-52-2331
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
研究・参考
[背景・ねらい]
果皮の着色はリンゴの商品価値に影響する重要形質であるが、品種によって着色の難易があり、「ふじ」に代表される難着色性の品種は葉摘み、玉まわし、反射資材の敷設など多大な労力を要求する。果皮色の赤/黄色はRf
座の遺伝子型によってほぼ決まるが、赤色品種間の着色程度の違いや着色の難易については、遺伝的基礎を明らかにする必要がある。
[成果の内容・特徴]
- 「かおり」×「マキ20」の分離F1集団(図1)を用いて、リンゴの果皮の着色を単位面積あたりのアントシアニン含量で評価し(図2)、量的形質として解析すると、検出される主要なQTL は両親第9連鎖群上のRf 座に一致し、その他の連鎖群上に複数のマイナーなQTL が検出される。
- マイナーなQTL の寄与率はそれぞれ5〜15%程度で(図3)、着色量や着色難易に関与する遺伝子座と考えられる。解析に用いた実験系の限界からLOD 値は低いが、複数調査年度にわたってQTL は同じ位置に検出される。
- 果実の陰向面(直射日光の受光量が制限される部位・散光条件下)について同様な量的解析を行うと、特定のQTL の寄与率が増減する(図3)。
- 陰向面で寄与率とLOD 値の顕著な増加が認められる「かおり」第16 連鎖群上のQTLと「マキ20」第17 連鎖群上のQTL は、散光着色性に関係すると考えられる。
- 陰向面ではRf 遺伝子座の寄与率が減少し、着色は量的形質としての性質が強くなる。
[成果の活用面・留意点]
- 「かおり」×「マキ20」のF1分離集団を用いた解析結果であり、交配組合せが異なれば分離するQTL は必ずしも一致しない。
- リンゴ品種では、一般に染色体はホモ化しておらず、F1で遺伝子型と形質が分離する。このため連鎖解析にはダブルシユードバッククロス法を用い、QTL 解析は両親の合計である34 連鎖群を対象に行っている。
[具体的データ]



[その他]
- 研究課題名
- リンゴのアントシアニン集積に関与する遺伝子座の解明
- 予算区分
- 交付金プロ( 二次代謝産物)
- 研究期間
- 2004〜2006 年度
- 研究担当者
- 深澤(赤田)朝子、工藤剛、今智之、佐藤耕、五十嵐恵(グリーンバイオ)