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JM7台利用樹の衰弱症状における年輪異常発生年の特定と樹勢回復法
[要約]
JM7 台利用樹の衰弱症状が認められた樹において、年輪の異常が確認された年代は2000 年及び2001 年に多い。また、衰弱症状が現れている樹では、接ぎ目コブの上部まで盛り土を行うことにより発根し、根量が増加して樹勢が回復する。
[キーワード]
リンゴ、JM7、衰弱症状、盛り土、年輪、樹勢回復
[担当]
岩手農研セ・園芸畑作部・果樹研究室
[代表連絡先]
電話0197-68-4417
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
リンゴわい性台木JM7 は、挿し木発根性が良いなど優れた特徴を持つ台木で、岩手県内では栽培面積が増加しているが、2004 年にJM7 台利用樹において樹勢の衰弱が顕在化し、衰弱の著しい樹は枯死も認められているため、この原因解明と対策技術の確立が急務となっている。
衰弱樹は、外部症状として接ぎ目コブの異常肥大(樹皮下はバーノット様症状)と、接ぎ目コブ部分の内部症状である年輪異常(異常な細胞分裂による波形)が認められている。異常な細胞分裂をした組織は褐変し、通道組織の障害等によって樹勢衰弱にいたると推察される。そこで、デジタルカメラ画像を用いて、年輪異常(波形)の発生年を特定することより原因解明に利用する。また、リンゴ樹の一般的な樹勢回復対策として盛り土が利用されていることから、当該症状に対する盛り土の効果を検討する。
[成果の内容・特徴]
- JM7 台利用樹の衰弱樹の年輪異常(波形)発生年を調査したところ、異常が確認された年輪の年代は2000 年及び2001 年に多い(表1、図1)。
- 衰弱樹の樹勢回復対策は盛り土が有効であり、盛り土当年から発根し、3 年で根量は著しく増加する( 図2
、データ省略) 。新梢長、樹勢に差が現れ、樹勢が回復するとともに、収量および果実重も維持できる(
表2 ) 。
- 盛り土は、樹勢衰弱症状を確認したら早めに接ぎ目コブの上部(接ぎ木部直下)まで行う。
[成果の活用面・留意点]
- JM7 台利用樹における衰弱症状の原因は未解明であるが、原因の一つとして、1999〜2000 年の冬期の2000 年2 月25 日に−9.1℃の低温に遭遇しており、その低温により形成層が障害を受け、生育期の細胞分裂異常を起こし年輪異常(波形)となったと考えられる。
- 盛り土はコブ上部まで行うが、自根が発生しないように穂品種までは土を盛らないように注意する。
- 若木では冬期に白塗剤を地際部に塗布し、剪定や肥培管理により適正な樹勢を維持するなど、凍害対策を十分に施すことが重要である。
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- JM7 利用樹における樹勢衰弱の原因解明と対策技術の確立
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2005〜2007 年度
- 研究担当者
- 小野浩司、大野浩、高橋司、畠山隆幸、田村博明、奥平麻里子、浅川知則、佐々木仁