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果汁が多くニホンナシのような食感を呈するリンゴ新品種「秋しずく」

[要約]

リンゴ新品種「秋しずく」は、10 月下旬に収穫可能な三倍体の晩生種である。 果形は長円でやや大玉であり、外観は種子親の「王林」に酷似する。食味は甘酸適和で果 汁が極めて多い。常温で約3週間、冷蔵(1±1℃)で年内一杯まで貯蔵可能である。

[キーワード]

新品種、リンゴ、「秋しずく」、晩生種

[担当]

秋田農技セ果試・リンゴ部

[代表連絡先]

電話0182-25-4224

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

「ふじ」に偏った品種構成を是正するため、本県の気象条件に適し、10 月下旬に収穫 可能な市場性の高いオリジナル新品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 育成経過
    1. 本品種は、昭和53 年に「王林」に「千秋」を交雑し、平成9年に1次選抜し、同12 年から現地試験を開始、平成16 年秋に育成を完了した。
    2. 平成17 年3月、県職務育成品種審査会の承認を経て品種登録申請を行い、平成19 年3月2日に品種登録された。
  2. 特性
    1. 三倍体のため受粉樹としては、利用できない。また、自家不和合性に関与する遺伝 子型はS1S2S7 のため、同様の遺伝子型を有する「王林」、「千秋」、「シナノスイート」 および「きおう」とは不和合である。
    2. 開花始めは「王林」と「ふじ」の中間であり、育成地(横手市)では、満開180 日 前後(暦日で10 月下旬)に収穫期を迎える(表2)。
    3. 果形は長円で380 g前後とやや大玉であり、果皮色、さび、ひび、果点荒れ等の外 観は、種子親の「王林」と酷似する。(図1)。
    4. 花芽の着生は比較的容易で短果枝の割合が多く、側枝は着果した果実の重みで開き やすい。
    5. 糖度は屈折計示度14 度前後、酸度は0.3g/100ml 前後と甘酸のバランス良く、肉質 も緻密で果汁も極めて多いことからニホンナシのような食感を呈する。しかし、収穫 が早いとデンプンが残り、人によっては渋みを感じる場合がある(表1)。
    6. 常温で約3週間、冷蔵(1±1℃)で年内一杯貯蔵可能である。貯蔵中、過熟果の 果面には、ワックスが発生する。
    7. 心かびの発生は無〜少で、つる割れや「千秋」特有の外部裂果は発生しない。
    8. 収穫前落果およびビターピットの発生が認められる。
    9. 通常の防除体系下で特に問題となる病害虫の発生は認められない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 「ふじ」に偏重した晩生種の一部を更新対象に導入を図る。
  2. 落果防止剤を散布する場合は、ストッポール1500 倍の一回散布で十分である。
  3. 着果過多による隔年結果性が強く認められるため、早期摘果と適正着果を心がける。
  4. 本品種の配布は、今後数年間、秋田県内のみに限る。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
地域適応性が高い優良新品種の育成
予算区分
県単
研究期間
1978 〜 2004 年度
研究担当者
上田仁悦、佐藤廣、照井真、丹野貞男、佐々木美佐子、丹波仁、田口辰雄、新妻胤次、小林香代子
発表論文等
品種登録(2007.3.2)、登録番号「第14919 号」