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地元産の素材で作ったラーメンには付加価値がある
[要約]
消費者は、全て地元産の素材で作られた「喜多方ラーメン」に付加価値を認めるが、その価値は「会津地域」に居住する人は「会津地域以外」に居住する人より厳しい値であった。また、「高すぎて注文しない」とする人の比率が高まるのは百円の桁が繰り上がるときであった。
[キーワード]
PSM、喜多方ラーメン、価格設定
[担当]
福島農総セ・経営・農作業グループ
[代表連絡先]
電話 024-958-1700
[区分]
東北農業・基盤技術(経営)
[分類]
行政・参考
[背景・ねらい]
福島県喜多方市は「ラーメンの街」として有名である。しかし、その素材(小麦粉、たれ、スープ、チャーシューその他具材)の多くは輸入物、移入物に依存しており、地元産の農畜産物は殆ど使われていない。
一方、最近では「ゆきちから」を初めとして優良な小麦が育成され、積雪地帯でも中華麺に適するとして利用されている。喜多方市では、小麦粉を初めとして素材の殆どを地元産農畜産物で作った「99.9%地元産・究極の喜多方ラーメン」の新商品化を模索している。このため、この新商品の価格設定のための調査を行い、商品開発と販売に向けての資料を得ることを目的とする。
[成果の内容・特徴]
- 素材全てを喜多方市内産農畜産物で作ったラーメン1杯への支払い意思額を調査し、PSM(Price Sensitivity Measurement)で解析した。
- 「安すぎて不安になる値段」、「安いと感じはじめる値段」、「高いと感じはじめる値段」、「高すぎて注文しない値段」それぞれに関して
- 性別では、「男」「女」間に有意な差はない。
- 居住地別では、「会津居住者」と「(会津を除く)県内居住者」の間で「高すぎて注文しない値段」に91 円の価格差がみられ、「高いと感じ始める値段」も会津居住者は低い。地元の人間にとっては差別化されたラーメンの価格に対しても厳しい意見を持つといえる(表2)。
- 普通の「喜多方ラーメン」は550 円前後であるが、「究極の喜多方ラーメン」の上限価格は回答者全体では690 円(図1)、対象を県内と県外居住者(非会津地域居住者・観光客)に限定すると750 円である(図2)。
- 「高すぎて注文しない」という比率が急激に増加する価格は「百円」の桁が変化する時であり、価格設定には注意を要する。(図1、2)
[成果の活用面・留意点]
- 調査対象は2007 年2 月に喜多方市で開催された「喜多方ラーメンフェスタ」への来場者であり、来場者数は約1万人、アンケート回収数520 名(24 日210 名、25 日310 名)、うち有効回答者数304 名である。(注:アンケートの回答で 「安すぎて不安になる値段」<「安いと感じはじめる値段」<「高いと感じはじめる値段」<「高すぎて注文しない値段」 の順序になっているものを有効回答とした。)
- 新商品開発の価格設定手法としての利用が期待でき、試験的にモデル店舗で「究極の喜多方ラーメン」を750 円で販売している。
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- 地場産小麦の中華麺適性の解明と安定供給技術の開発
- 予算区分
- 競争的資金(高度化事業)
- 研究期間
- 2006 年度〜2007 年度
- 研究担当者
- 藤澤弥榮、荒川市郎