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グラウンドカバープランツとしてのイブキジャコウソウによる農地法面の植生管理
[要約]
イブキジャコウソウは、4月下旬以降の萌芽した枝を挿し穂に用いて容易に繁殖が可能であり、定植当年の秋及び翌年秋の被覆度はそれぞれ約60%、80%と被覆能力が高い。
[キーワード]
グラウンドカバープランツ、イブキジャコウソウ、雑草抑制
[担当]
岩手農研セ・農産部・生産工学研究室
[代表連絡先]
電話0197-68-4415
[区分]
東北農業・基盤技術(作業技術)
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
農水省の農地・水・環境保全向上対策が施行され、農村地域では農地法面の雑草管理の軽減と景観向上にグラウンドカバープランツの導入が開始されている。寒冷地でのグラウンドカバープランツ品目としては、イブキジャコウソウが有望であり、その法面被覆方法については、セル苗と基盤材を混和した動力吹付施工による方法が確立されている。
しかし、機械施工による法面被覆は省力的ではあるものの施工単価が高く、一般農家への導入が困難であった。
そこで農家の方が容易にイブキジャコウソウを自家増殖し、傾斜地などの草刈り作業が困難な場所で雑草管理の軽減ができるように、その繁殖法と育苗管理を検討し、機械施工に依らない農地法面の植生管理を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 挿し木繁殖技術
- 挿し木の実施時期は、採穂株が萌芽する4月下旬以降が良い。伸長している枝の上位5〜6節を挿し穂として挿し木繁殖すると、約1ヶ月で90%以上が定植苗に育成できる(表1)。
- 挿し木は、天挿し(頂芽+1節)または管挿し(1節)とし、節が僅かに培土に埋まる方法とする(表1)。
- 挿し木の手順や育苗管理の概要
- 挿し床は、200 セルのトレーに市販の育苗用土を充填し吸水させる。挿し穂の長さは3〜5cm程度に調整する(表2)。
- 育苗中の温度は、15℃以上25℃以下で管理し、特に加温は行わない。挿し木後1週間はプール育苗と遮光を行う(表2)。
- 管理労力と被覆度
- 法面に定着した場合、雑草の抜取り作業は年2回必要である。作業労力は、100 u当たり植栽当年には15 時間、翌年には11 時間が必要である(表3)。
- 経時的なイブキジャコウソウの被覆度は、定植初年目秋(4ヶ月後)に約60%、翌年秋(16ヶ月後)にはほぼ80%に達する(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 萌芽前の株を挿し木繁殖する場合は、葉の着生している枝の発根率が高い(データ割愛)。
- 移植1年目は、土壌や天候条件にもよるが、雑草抜取りや水やり等の適切な管理が必要である。実証地は重粘土で固く、傾斜角約45°の痩せた土壌条件であったため、2年目には全面被覆に至らなかった。全面被覆した場合には、雑草管理に要する時間は大幅に減少する。
- イブキジャコウソウは木本類に属しマット形成する。草丈が20cm 程度になるため、水田畦畔の天端以外で草刈り作業が困難な農地法面に適する。
- 開花最盛期は6月下旬から7月中旬であるが、10 月頃まで開花が断続的に続くので、カメムシの薬剤防除ではミツバチへの影響に注意が必要である。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 寒冷地におけるグラウンドカバープランツの動力吹付け緑化工法の実証、
大規模稲作経営における主要農業機械作業の評価
- 予算区分
- 国庫、県単
- 研究期間
- 2002〜2007 年度
- 研究担当者
- 須藤勇人