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耐冷性が強い紫黒糯米新品種「青系紫糯154号」の育成
[要約]
「青系紫糯154号」は、“中生の早”で耐冷性が“強”の紫黒糯米で、玄米はアントシアン系の濃い紫色を呈し、赤飯などの各種調理飯や赤餅等の加工食品等に利用できることから、青森県の認定品種に指定された。
[キーワード]
イネ、青系紫糯154号、紫黒糯米、認定品種、障害型耐冷性、短強稈
[担当]
青森農林総研・水稲育種部
[代表連絡先]
電話0172-52-4312
[区分]
東北農業・作物(稲育種)
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
青森県の紫黒米は県南地域を中心に1ha程度作付されているが、多くは「朝紫」である。「朝紫」は熟期が遅く耐冷性が不十分で生産が不安定となっていることから、青森県に適した熟期で耐冷性の強い糯種の紫黒米品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「青系紫糯154号」は、中生の耐冷・耐病・紫黒糯米品種の育成を目標に、1993年に「奥羽糯349号(朝紫)」を母、「ふ系糯170号」を父として人工交配を行い、その後代から育成された品種である(表1)。
- 出穂期は「ユキミモチ」並みで、成熟期が「ユキミモチ」よりやや遅く、育成地では“中生の早”に属する糯種である(表1)。
- 稈長は「朝紫」より短く「ユキミモチ」並みの“短稈”で、「ユキミモチ」に比べ穂長はやや短く、穂数が同程度で、草型は“偏穂重型”である。耐倒伏性は「朝紫」より強く「ユキミモチ」並みの“強”である。籾には極短芒を少程度生じ、ふ先色は“紫”である(表1)。また、幼苗期から成熟期にかけて葉縁、葉舌、葉鞘、稈、節等が紫色を呈する。
- 障害型耐冷性は、「朝紫」「ユキミモチ」より強い“強”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちは「朝紫」「ユキミモチ」より弱い“中”、穂いもちが「朝紫」より強く「ユキミモチ」より弱い“やや弱”である。穂発芽性は「ユキミモチ」より発芽しにくく、「朝紫」並みの“極難”である。収量性は「ユキミモチ」より低く、「朝紫」並みである(表1)。
- 玄米の形は「朝紫」並みの“半紡錘形”、粒大は“小”で、玄米千粒重は19g程度である。玄米は果皮がアントシアン系の濃い紫色(暗紫)を呈し、玄米品質は「朝紫」よりやや劣る“中上”である(表1)。
- 餅の食味は「ユキミモチ」より劣り、「朝紫」並みの“中中”で、白米に紫黒米を混米した赤飯では、「朝紫」の混米より色がやや薄い(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 赤飯などの各種調理飯のほか、赤餅等の加工食品、菓子類等に利用できる。
- 穂発芽性が“極難”で休眠が深いと考えられるので、播種前の種子の浸漬は十分に行う。
- 播種量は、籾千粒重が小さいので10%程度減ずる。
- いもち病抵抗性が弱いので葉いもちの予防を行うとともに、基本防除を遵守する。
- 玄米はやや細長く千粒重が小さいので、玄米選別は原則として1.7mmの篩目で行う。
- 収穫調製時の一般米への混入や近隣に作付けされた品種との交雑には特に注意する。乾燥機、籾摺機は一般米と別にすることが望ましく、また、当該品種を作付したほ場に翌年別の品種を栽培する場合は、こぼれ種子の生育に十分注意し、適宜抜き取るようにする。
[具体的データ]


[その他]
- 研究課題名
- 第II期水稲良食味品種早期開発事業及び「売れる青森米」水稲新品種強化育成事業
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1993〜2006年
- 研究担当者
- 三上泰正、川村陽一、横山裕正、高舘正男、小林渡、前田一春、舘山元春、中堀登示光、小林健一、小山田善三、今智穂美
- 発表論文等
- 前田ら(2007)東北農業研究60:3-4.