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カドミウム高吸収イネ品種「長香穀」の土壌修復技術への利用

[要約]

カドミウム(Cd)汚染水田に対する土壌修復植物として見出したイネ品種「長香穀」はCd吸収性に優れ、礫質な普通灰色低地土の現地水田でこの品種を用れば0.75mg/kg程度の作土中Cd濃度を3年間で約40%低減できる。

[キーワード]

カドミウム、イネ、ファイトレメディエーション、土壌汚染

[担当]

秋田農技セ農試・生産環境部・土壌基盤担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・基盤技術(土壌肥料)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

コメの含有カドミウム(Cd)規準改定などの情勢から、従来より低い土壌Cd濃度の水田も対応が必要になる場合が考えられる。その対策の一つとして植物により土壌からCdを除去する技術いわゆるファイトレメディエーションが注目されており、その技術開発は喫緊の課題である。「水田」の様々な特性を維持しながらCdを効率的に除去するには、修復植物としてイネが最適であると考えられることから、本研究ではイネの中からCd吸収性に優れる品種を見出し、その品種を用いたほ場レベルでの栽培試験を行い、土壌Cd濃度の低減を実証する。

[成果の内容・特徴]

  1. ほ場条件や試験年次により土壌Cd濃度に対する作物Cd濃度は変動するが、同年次の同一ほ場内では長香穀の作物体Cd濃度は、Cd高吸収品種として知られる密陽23号、ハバタキよりも2倍以上高い(図1)。
  2. 長香穀の地上部乾物重は他品種に対して2割程度小さいものの安定した生育量が得られ、またCd吸収量に換算するとCd濃度と同様に著しく高く、土壌修復用品種として他品種より優れている(図1)。
  3. Cd吸収が最大になる条件で栽培した長香穀の地上部をほ場外へ持ち出すことによって、0.75mg/kg程度の作土Cd濃度が3年間で、作付前に比べて約40%低下する(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 供試した現地試験ほ場や周辺水田では、水管理によるCd吸収抑制栽培が徹底されており問題になる玄米は生産されていない。しかし夏季の気象やたん水管理の不徹底によりCd含有規準を超える米が生産される危険が高く、今後対策が必要となる土壌条件である。
  2. 土壌Cd低減割合は修復実証に供したほ場条件での土壌Cd濃度低減結果であり、異なるほ場条件や土壌条件、気象条件では低減結果も異なると考えられる。
  3. 修復終了点とする土壌Cd濃度や修復年数、修復後の農作物に対する修復効果、さらにその持続性などは今後の検討課題である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
主要作物のカドミウム吸収・蓄積を抑制するための総合管理技術の開発
予算区分
受託(農環研)
研究期間
2003〜2007年度
研究担当者
伊藤正志、中川進平、伊藤千春、金和裕