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オオトゲシラホシカメムシ集合フェロモンの絶対立体配置

[要約]

オオトゲシラホシカメムシは2-methyl-6-(4’-methylenebicyclo[3.1.0]hexyl)hept-2-en-1-olの8種類の異性体のうち、 (2Z,6R,1’S,5’S)-体に誘引される。(2Z,6S)-体は(2Z,6R)-体の活性を阻害しないことから、(2Z,6R,1’S,5’S)-体のラセミ体を予察等に使うことができる。

[キーワード]

オオトゲシラホシカメムシ、集合フェロモン

[担当]

山形農総研・農業環境研究部・環境技術開発科

[代表連絡先]

電話 023-647-3500

[区分]

東北農業・基盤技術(病害虫)

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

山形県における斑点米カメムシ類の主要種の一つであるオオトゲシラホシカメムシは、雄成虫が集合フェロモンを放出し同種他個体を誘引することがわかっている。また、集合フェロモンは、MSおよびNMR分析により2-methyl-6-(4’-methylenebicyclo[3.1.0]hexyl)hept-2-en-1-olと推定されている。本種のフェロモンによる予察等への応用について検討するため、本化合物の立体異性体の合成品について生物活性試験を行い、絶対立体配置決定の一助とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 二重結合の幾何構造と6位の不斉炭素の立体配置の異なる異性体である、(2E,6R)-体、(2E,6S)-体、(2Z,6R)-体、(2Z,6S)-体のうち、(2Z,6R)-体で活性が認められる(図1)。
  2. (2Z,6R)-体の5員環と3員環との接合部に関する異性体(2Z,6R,1’S,5’S)-体と(2Z,6R,1’R,5’R)-体のうち、 (2Z,6R,1’S,5’S)-体で活性が認められる(図2)。
  3. (2Z,6R)-体とこれに同量の(2Z,6S)-体を加えても、誘引虫数に有意差はみられない(図3)。(2Z,6S)-体は(2Z,6R)-体の活性を阻害しないため、純粋な(2Z,6R,1’S,5’S)-体ではなく、合成がより容易なラセミ体を予察等に使うことができる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 天然物と合成品のNMR分析および生物活性試験により、オオトゲシラホシカメムシの集合フェロモンの絶対立体配置を(2Z,6R,1’S,5’S)-体と決定している(森謙治ら Tetrahedron Letters 49(2008)354-357)。
  2. 生物活性試験には、森謙治氏より提供された合成品と(独)農業環境技術研究所より提供された天然物を用いた。
  3. 生物活性試験は、平成16年度成果情報「オオトゲシラホシカメムシ集合フェロモンの単離と誘引現象」に記載された方法に基づいて行っている。
  4. 平成16年度成果情報「オオトゲシラホシカメムシ集合フェロモンの単離と誘引現象」では、集合フェロモンの幾何異性がシス体(E)であるとしたが、トランス体(Z)に訂正する。
  5. 今後、集合フェロモンを発生予察等に利用するためには、フェロモンを保持する担体の種類や設置方法等について検討する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
発生予察事業
予算区分
国庫
研究期間
2006年度〜2007年度
研究担当者
吉村具子、越智昭彦