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米から得られる蛍光を指標とした米の鮮度評価技術

[要約]

米は貯蔵中に劣化(酸化)し、劣化が進んだ米は紫外域光により励起される蛍光の強度が増加するため、蛍光強度を指標として非破壊で米鮮度評価が可能である。本指標は食味官能値や従来鮮度指標と高い相関関係を有し、品質評価法として有効である。

[キーワード]

米、鮮度、品質、酸化、蛍光

[担当]

山形県農業総合研究センター・農業環境研究部・作物資源開発科

[代表連絡先]

電話023-647-3500

[区分]

東北農業・基盤技術(作業技術)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

米などの穀類は、本来、貯蔵性の高い農産物として扱われてきたが、貯蔵期間が長くなるにつれて古米化し、品質低下に伴って食味は徐々に低下する。古米化現象を鮮度変化とした場合、「米の新鮮さ」を評価する数種類の理化学的分析手法が確立されているが、流通段階で鮮度管理に利用可能である簡便かつ迅速な手法が求められる。そこで、米の蛍光画像を用いた米鮮度評価方法の確立に向けて、蛍光発光由来物質を探索し、鮮度劣化との関係を検証する。

[成果の内容・特徴]

  1. 玄米切片の蛍光観察では、脂質が多く含まれる糊粉層付近の蛍光強度が強く(図1)、劣化(酸化)が進んだ米は同部位の蛍光強度がさらに高まる。
  2. 玄米(粉体)から蛍光波長420-500nm(励起波長340-380nm)が得られ(図2)、貯蔵期間及び貯蔵温度の増加に連動して同域で蛍光強度が増大する。脱脂した玄米(粉体)からは同域の蛍光スペクトルは得られるが、蛍光強度は大きく低下することから、鮮度劣化による蛍光強度増加には脂質の関与が明白である。
  3. 長期貯蔵により、劣化した玄米から中性脂質を得て薄層クロマトグラフィーでさらに分離して紫外線(中心波長365nm)を照射すると、ステロール画分の蛍光発光が高まる(図3)。脂質の酸化による蛍光発光への関与が認められる。
  4. グアヤコール呈色法、脂肪酸度測定及び熱糊化特性変化による鮮度評価法と紫外線励起により発せられる蛍光の強度を指標とした評価法による鮮度評価値の間には、品種が なった場合においてもそれぞれ有意の相関関係にあり(表1)、蛍光強度による米品質評価の有効性が認められる。また、食味官能試験結果と蛍光強度との間には有意な負の相関関係が見られ(r=-0.448**、1%水準で有意、n=87)、蛍光強度によって品質劣化に伴う食味変化推測が可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本評価法を具現化した機器により、非破壊かつ短時間に米鮮度を評価することが可能である。当研究グループでは装置開発に取り組んでおり、現場適応性の高いプロトタイプ完成形を提示可能である。
  2. 本評価法による機器を用いることで、貯蔵中の米品質を簡便に測定して、保存状態の検証に活用できる。
  3. 収穫(籾摺り)後の蛍光強度を初期値として、貯蔵中の測定値との比較を行うことで米鮮度劣化を評価する

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
非破壊型検査手法を用いた米の鮮度評価技術開発
予算区分
受託
研究期間
2005〜2007 年度
研究担当者
浅野目謙之、山川淳、工藤篤、齊藤敏一、八谷満(生研センター)、(株)山本製作所
発表論文等
八谷ら(2006)「米の品質測定方法及び米の品質測定装置」特開2007-232520