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東北地域の水稲直播栽培における玄米品質の向上
[要約]
東北地域における水稲直播栽培では移植栽培と比較して減収するものの、出穂の遅れや籾数の減少等により、2次枝梗着生籾の減少、登熟気温の低下、玄米粒形の増大を生じ、千粒重の増加や整粒歩合の向上により玄米品質が高まる。
[キーワード]
イネ、玄米品質、直播、東北地域
[担当]
東北農研・東北水田輪作研究チーム、東北各県農業試験研究機関
[代表連絡先]
電話0187-66-2776
[区分]
作物、東北農業・作物(稲栽培)
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
直播栽培の導入は、稲作の省力化や大規模化に有効となるが、これまで東北地域における直播水稲の品質特性の詳細な検討事例は少なく、地域全体を総括するような解析が近年行われていない。そこで、東北各県の農業試験研究機関の参画により2004年から2006年に実施した連絡試験における各地の移植および直播栽培の圃場試験の結果をもとに、東北地域における直播水稲の品質関連形質の特徴を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 東北地域の移植および直播の普通期栽培を比較すると、直播栽培により出穂期が平均で5〜10日程度遅くなり、登熟気温(出穂後40日間)が約1℃低下する(表1)。
- 直播栽培では移植栽培と比較して1穂籾数の減少にともない収量性は低下するものの、登熟に不利になる2次枝梗着生籾が減少する(表1)。
- 登熟気温の高い条件で整粒歩合が低下しやすいため、登熟気温が低下する直播栽培では整粒歩合が安定して高い(表1、図1)。また、登熟気温が低下しても直播水稲の登熟性は安定している(図2)。
- 直播栽培の出穂期の遅れにともなう籾殻形成期(出穂5〜24日前)の気温上昇、登熟気温(出穂後20日間)の低下により、玄米の「長さ」が増大する(表2)。
- このような、2次枝梗着生籾の減少、登熟気温の低下、玄米粒形の増大にともない、直播水稲は千粒重の増加や整粒歩合の向上により玄米品質が高まる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、寒冷地における水稲直播栽培導入時の参考資料として利用可能。
- 試験地は、青森県農総研センター(黒石市)、岩手県農研センター(北上市)、宮城県古川農試(大崎市)、秋田県農試(秋田市)、東北農研(秋田県大仙市)、山形県農総研センター(山形市)、福島県農業総合センター(郡山市、河沼郡、相馬市)で、各地の基幹品種を供試している。延べ9地点のうち湛水直播8地点、乾田直播1地点。
- 登熟期の極端な低温条件は網羅していない。遅延型冷害を生じない出穂後40日間の平均気温20℃以上において適用可能な情報である。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 東北地域における高生産性水田輪作システムの確立
- 課題ID
- 211-k
- 予算区分
- 基盤研究費
- 研究期間
- 2004〜2007年度
- 研究担当者
- 吉永悟志、東北各県連絡試験担当者、長田健二、白土宏之、福田あかり