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小規模ビール醸造用寒冷地向け二条大麦新品種「小春二条」
[要約]
二条大麦「小春二条」は播性がIIの寒冷地向け中生種で、耐雪性は「シュンライ」と同等である。穂発芽性がやや難で粒の外観品質が優れる。「ミノリムギ」より麦芽エキスやジアスターゼ力が高い。小規模ビール醸造用として岩手県等で普及が見込まれる。
[キーワード]
二条オオムギ、新品種、地ビール、寒冷地
[担当]
東北農研・パン用小麦研究東北サブチーム
[代表連絡先]
電話019-643-3512
[区分]
東北農業・作物(冬作物)、作物・冬作物
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
東北・北陸地域では小規模な醸造会社により、地元産麦を原料としたビール醸造が行われている。しかし、既存のビール用二条大麦は耐寒性、耐雪性が劣るため、二条大麦を春播したり、六条大麦や小麦を用いて原料確保が行われている。そこで、ビール醸造適性を有し、寒冷地での秋播が可能な二条大麦の育成を図った。
[成果の内容・特徴]
二条大麦「小春二条」(旧系統名:東北皮38号)は高醸造適性、二条、大粒、耐寒雪性、早生、多収、耐病性、強稈、外観品質良を育種目標として1996年5月に東北農業試験場にて「F1=ニシノゴールド/ミユキオオムギ」を母とし、「九州二条11号(後のミハルゴールド)」を父として人工交配を行い、選抜・固定を図ってきたものである。2006年に播種した世代はF11である。
育成地では「ミノリムギ」と比較して次のような特徴がある(表1)。
- 播性はIIで出穂期、成熟期はほぼ同じ中生種である。
- 稈長は同程度のやや長稈種で穂数が多く、耐倒伏性は「中」である。
- 耐寒性は「中」、耐雪性は「やや弱」で劣り、「シュンライ」並である。
- 穂発芽性、赤かび病抵抗性は「やや難」、「やや強」で優れ、大麦縞萎縮病、うどんこ病抵抗性は同じ「中」である。
- 収量は少なく、千粒重、リットル重は大きく、外観品質は優れる。
- 麦芽品質ではコールバッハ数は大きくて劣るが、麦芽エキス、ジアスターゼ力、最終発酵度は優れ、麦芽品質を総合的に評価する麦芽評点も高い。
- 搗精品質は搗精時間が短く、精麦白度、炊飯麦の白度が高く優れる。
[成果の活用面・留意点]
- 寒冷地の根雪期間70-80日以下の平坦地に適する。
- 「ミノリムギ」より倒伏しやすいので、早播や厚播は避け、肥沃地では肥培管理に注意する。
- 小規模ビール醸造用として普及が見込まれる。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 大麦・はだか麦の需要拡大のための用途別加工適性に優れた品種の育成と有用系統の開発
- 課題ID
- 311-d
- 予算区分
- 基盤研究費
- 研究期間
- 1995〜2007年度
- 研究担当者
- 谷口義則、伊藤裕之、平将人、前島秀和、吉川亮、中村和弘、八田浩一、 中村洋、伊藤美環子、伊藤誠治
- 発表論文等
- 品種登録 2008年1月21日 第22007号
谷口ら(2006)東北農業研究 59:65-66