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麦類・大豆同時播種機によるリビングマルチ大豆栽培の播種技術
[要約]
麦類をリビングマルチとして利用する大豆栽培のための麦類・大豆同時播種機を製作した。1工程で大豆を3条,麦類を大豆の条と条の間に2条ずつ条播し、整地、施肥も同時に行うものである。作業能率、播種精度とも慣行の3条播種と同等である。
[キーワード]
リビングマルチ、大豆、麦類、麦類・大豆同時播種機
[担当]
東北農研・カバークロップ研究チーム
[代表連絡先]
電話024-593-5151
[区分]
東北農業・作物(夏畑作物)、共通基盤・作付体系・雑草
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
食品に対する安全・安心への期待の高まりから、除草剤などの資材の使用を極力減らした栽培技術が求められている。そのような技術の一つとして、東北地域では麦類を大豆と同時に播種することで雑草を抑えるリビングマルチ栽培技術の開発が進められている。しかし、これまでは麦類と大豆を同時に播種する播種機がなく、播種に手間がかかったため、広範な普及には至っていない。そこで整地、麦類と大豆の播種、施肥を1工程で行うことができる播種機を製作し、リビングマルチ大豆栽培における播種作業の能率向上を図る。
[成果の内容・特徴]
- ハローシーダーの播種ユニットについて、麦類用(回転横溝ロール式)と大豆用(傾斜目皿式)を交互に配列したものである(図1)。市販されている3条用大豆ハローシーダーに麦類用のユニットを加えるか、6条用麦類ハローシーダーに大豆用のユニットを加えることで製作できる。
- 1工程で大豆を70cmの条間で3条、大豆の条と条の間に麦類をそれぞれ2条(計6条)播き、整地、施肥も同時に行うことができる
- 35psのトラクタに装着すると、慣行の3条播種と同様に、0.6m/s程度の速度で走行し、1時間で約30a播種することができ、播種精度も良好である(表1)。
- 本機で播種したリビングマルチ大豆栽培の現地試験では慣行栽培に比べ、抑草効果が十分でない例もあるが、大豆の収量に影響するほどの雑草害は見られない(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- オープナーは通常の5cmの幅のものとする。10cmの幅広のものを用いた場合と比べて麦類の播き幅は狭くなるが抑草効果は変わらず、播種速度が向上する。
- 播種ユニットの構成を元に戻せば、麦類や大豆の通常の播種にも使える。
- 麦類の播種量は10kg/10a程度で、麦類に対する施肥は通常行わない。大豆の播種量および施肥量は慣行通りとする。
- 雑草の発生量が多いことが予想される畑では土壌処理型除草剤を併用する。
- 抑草効果は土壌条件や地域によって異なるので、栽培技術の安定化のため、今後も各地の試験栽培でデータを収集していく必要がある。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
- 課題ID
- 214-c
- 予算区分
- 基盤研究費
- 研究期間
- 2005〜2007年度
- 研究担当者
- 小林浩幸、好野奈美子、内田智子、島崎由美、酒井真次、坂上修、大谷隆二、小柳敦史、山下伸夫
- 発表論文等
- 1)東北農研(2007)「麦をリビングマルチとして用いる大豆栽培」
2)酒井ら(2006)日作東北支部報、49: 65-68