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東北地方における寒締めホウレンソウの1kmメッシュ糖度予測情報

[要約]

1kmメッシュ気温および気象予測データを用いハウス内地温を推定することで、寒締めホウレンソウの糖度を推定する方法を開発した。一週間先までの糖度予測情報を提供でき、より糖度の高く高付加価値なホウレンソウの出荷が可能となる。

[キーワード]

気象予測データ、寒締めホウレンソウ、糖度、脱順化、1kmメッシュ

[担当]

東北農研・やませ気象変動研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3408

[区分]

東北農業・基盤技術(農業気象)、共通基盤・農業気象

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

冬の寒さを利用した寒締め栽培は、良食味・高付加価値なホウレンソウの生産を可能とする。しかし、きちんと低温に当たらないと糖度が上がらず品質が落ちる危険があるため、生育状況と気象条件の両方を考慮した栽培管理・出荷を行う必要がある。そこで、寒締めホウレンソウの糖度を、気象予測データを用いて推定する方法を開発し、現場での計画的な生産・出荷に役立てる。

[成果の内容・特徴]

  1. パイプハウス内10cm深の地温は、以下の式を用いて計算される。
       ハウス内気温=外気温+0.5(℃)                  (1)
       Tsoil,n = a Tair,n + (1 - a) Tsoil,n-1 + b       (2)
       ここで、Tsoil,n:n日目の地温、Tair,n:n日目の気温
    外気温には1kmメッシュ気温データおよび1kmメッシュ気象予測データを用いる。気象予測データは、気象庁GSMデータを日本気象協会の局地気象モデル(ANEMOS)により5kmに展開し、さらに筑波農林水産計算センターのサーバ上で1kmまでダウンサイジングしたものを用いている。
  2. 寒締めホウレンソウの糖度は、東北各地での試験から得られた葉身糖度の平均的関係式から計算される。用いる気象要素は前5日間の平均地温である。
  3. 2007年11月21日に計算された当日糖度は、過去5日間の地温が高めのため値は低いが、4日先の25日予測糖度では、寒波の到来により気温が低くなるとの気象予測に基づき、糖度が上昇すると予測されている(図1)。11月25日の当日糖度は21日に予測された結果とほぼ同じ値を示しており、数日先の糖度予測に基づいた出荷調整等が可能であることが分かる(図2)。
  4. 前日の日平均地温が8℃を超えた地点では脱順化(糖度および耐凍性の低下)が発生する可能性が出てくるため、脱順化警報を発する(図3)。
  5. メッシュ気温平年値を用いて作成した予測糖度の平年値を、1月10日を例に示す(図4)。同様の日別糖度平年値マップは10日間隔で12月〜3月まで作成されており、計画的な出荷の参考にすることができる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 計算される糖度は、パイプハウスの側窓を開放した場合の推定値である。
  2. 糖度予測式を求めるための試験では、品種「まほろば」を用いた。
  3. 日照の多少により、糖度は±1度程度は変動する可能性がある。
  4. 現時点では東北地方にのみ適用可能である。
  5. 糖度推定式は未公表資料なので、まだ一般に公開していない。地温推定式のパラメーターもあわせて、必要な場合は個別にお問い合わせいただきたい。
  6. ウェブGISを用いた情報公開は2008年度秋からの開始を予定しているが、現在ウェブ上で試験的に情報を公開している。URLはhttp://tohoku.dc.affrc.go.jp/yamase.htmlである。

[具体的データ]

図1 2007年11月21日に計算された糖度推定値.図2 11月25日に計算された当日の糖度推定値.

図3 脱順化警報マップ.図4 糖度平年値マップ.

[その他]

研究課題名
やませ等気象変動による主要作物の生育予測・気象被害軽減技術の高度化と冷涼気候利用技術の開発
課題ID
215-b
予算区分
高度化事業、基盤研究費
研究期間
2003〜2007年度
研究担当者
菅野洋光、岡田益己、青木和彦、森山真久、濱嵜孝弘(北農研)