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株元から汚染部位までの距離がキュウリホモプシス根腐病の発病に与える影響

[要約]

株元から汚染部位までの距離が異なる土壌カラムにキュウリ苗を移植した場合、非汚染部位に伸展する根にもホモプシス根腐病が発生し、その発病程度に顕著な違いはない。一方、萎凋症状の発症時期は汚染部位までの距離が離れるにしたがって大きく遅延する。

[キーワード]

キュウリ、ホモプシス根腐病、土壌病害、土壌カラム

[担当]

東北農研・寒冷地野菜花き研究チーム

[代表連絡先]

電話024-593-6175

[区分]

東北農業・基盤技術(病害)

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

キュウリホモプシス根腐病の防除対策として、クロルピクリンくん蒸剤のマルチ畦内処理はガス抜き耕起を伴う全面処理と比較して効果が高い(岩舘ら、平成18年度成果情報)。しかしながら、本防除法によって萎凋症状が顕著に抑制されても根部の発病状況には明確な抑制が見られない場合があることが指摘されている(堀越ら、北日本病虫研報58巻)。そのため、本防除法については、土壌消毒が根腐れ症状と萎凋症状の抑制に与える影響を区別して解析し、防除効果が得られる要因を明らかにした上で栽培現場に普及させる必要がある。そこで、薬剤による土壌消毒を想定した実験系として、土壌を充填したカラムを組み合わせることによって株元から汚染部位までの距離が段階的に異なる条件を設定し、そこに移植したキュウリ苗の発病状況を解析した。

[成果の内容・特徴]

  1. 図1に示すように、ホモプシス根腐病菌で汚染させた土壌を積層したカラムにキュウリ苗を移植して底面吸水により栽培した場合、移植106日後では非汚染土に伸長するほとんどの根に発病が見られ、その発病度はDIS25の土壌カラムの最上位層(L1)で明瞭に低下する程度である(図2)。
  2. 各土壌カラムにキュウリ苗を移植した51日後では、DIS0において供試個体全てに激しい萎凋症状が観察されるがDIS10での発病はわずかであり、それ以外では発病が見られない。また、移植93日後でもDIS25では萎凋症状は全く発現しない(図3)。よって、株元から汚染部位までの距離は、根部の発病程度よりも萎凋症状の発現に大きく影響すると考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. キュウリホモプシス根腐病をマルチ畦内消毒や根域の制御によって防除する際、その効果の安定性を確保するための基礎データとして利用できる。
  2. 自根のキュウリ苗を用いた結果であり、カボチャ台木を接いだキュウリにおける結果ではない。

[具体的データ]

図1. 株元から汚染部位までの距離を変化させるための積層土壌カラムの構造

図2. 株元から汚染土壌までの距離がキュウリ根の発病に与える影響図3. 株元から汚染土壌までの距離がキュウリの萎凋症状に与える影響

[その他]

研究課題名
寒冷・積雪地域における露地野菜及び花きの安定生産技術の開発
課題ID
211-i
予算区分
高度化事業
研究期間
2005〜2007年度
研究担当者
永坂厚、門田育生