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乳牛の腹腔内脂肪組織におけるアディポネクチンおよびレプチン発現の変化
[要約]
インスリン感受性を変化させるホルモンのアディポネクチンと摂食抑制ホルモンのレプチンがホルスタインの腹腔内脂肪組織で発現しており、その発現のレベルは乾乳期で高い傾向にある。これは乳量調節に脂肪が深く関与することを示す。
[キーワード]
家畜生理、乳用牛、アディポネクチン、脂肪組織、乳腺組織
[担当]
東北農研・東北飼料イネ研究チーム
[代表連絡先]
電話019-643-3564
[区分]
東北農業・畜産、畜産草地
[分類]
研究・参考
[背景・ねらい]
泌乳牛の乳量を決める大きな要因は乳腺組織へのグルコースの供給量であり、その供給量を増加させるのは乳腺組織以外で起こるインスリン感受性(インスリンの効きやすさ)の低下に起因するが、その作用機序については不明のままである。
本研究の目的は脂肪組織から分泌されるホルモンで、インスリン感受性の亢進を抑制するアディポネクチンや、摂食抑制ホルモンであるレプチンのホルスタイン種泌乳牛における発現レベルを明らかにすることにある。
[成果の内容・特徴]
- リアルタイムPCRによるmRNA量の測定では腹腔内脂肪組織におけるアディポネクチンmRNA発現は乾乳期に比べ泌乳期で有意に低い(図1)。泌乳牛で起こるインスリン感受性亢進の一部は腹腔内脂肪組織で合成されるアディポネクチンの低下によるものと考えられる。アディポネクチンが乳量のコントロールに関与していることを示す初めての知見である。
- 腹腔内脂肪組織におけるレプチンの発現量は泌乳最盛期で乾乳期に比べて有意に低い(図2)。乳腺組織におけるレプチン発現量は泌乳ステージによる差は見られない(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 泌乳期におけるアディポネクチンの変化は乳生産に腹腔内脂肪組織が深く関わることを強く示唆し、インスリン感受性制御機構の解明に役立つ情報となる。
- 乾乳期の腹腔内脂肪組織におけるレプチンの発現量増大は泌乳期の摂食行動にレプチンの分泌動態が重要であることを示唆し、効率的な乳生産の増大に役立つ情報となる。
- インスリン感受性にはいくつかのホルモン、サイトカインおよび栄養素が複合的に関与しているのでその他因子に関する調査も必要である。
[具体的データ]
*図1〜3は全て泌乳最盛期のmRNAの値を100としたときの相対的な値



[その他]
- 研究課題名
- 地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
- 課題ID
- 212-b
- 予算区分
- 科研費
- 研究期間
- 2006〜2007年度
- 研究担当者
- 小松篤司、伊藤文彰、櫛引史郎
- 発表論文等
- Komatsu et al. (2007) Anim. Sci. J. 78:98-102