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夜冷短日処理と窒素追肥によるイチゴ超促成作型の年内収量向上技術

[要約]

イチゴ品種「さちのか」を用いた超促成作型において、64 日間の夜冷短日処理と処理期間後半に窒素濃度75mg/L の液肥を1 日1 回施用することで、頂花房から第1次腋花房への連続的な花成誘導を促進し、年内収量が向上する。

[キーワード]

イチゴ、超促成作型、連続出蕾、夜冷短日処理

[担当]

岩手農研・園芸畑作部・南部園芸研究室

[代表連絡先]

電話0192-55-3733

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

イチゴ促成作型では、育苗期の短日処理、夜冷短日処理等により、単価の高い10、11 月に収穫できる超促成作型の導入が図られているが、頂花房と第1次腋花房との間に中休みを生じるため、年内収量の向上に至っていない。そこで、年内収量を高めるために、育苗期の夜冷短日処理と窒素追肥による頂花房から第1次腋花房への連続出蕾への効果を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 促成用品種「さちのか」を用い、5 月下旬に10.5cm ポットへ挿し芽した苗を30 日間株養成後、6 月下旬から64 日間夜冷短日処理することで、頂花房と第1 次腋花房の花成誘導が促進され、花房間葉数が2~3 枚となることで2 花房間の連続出蕾が可能となる(図1表1)。
  2. 夜冷短日処理開始後34 日目から25 日間、窒素濃度75mg/L の液肥を毎日朝1 回、充分量(280ml/株)施用することで頂花房の出蕾が促進され、第1 次腋花房の出蕾も安定する(表1)。
  3. 夜冷短日処理により年内収量が向上し、処理期間中の追肥により2 月までの高単価時の収量が大幅に向上する(表2)。
  4. 超促成作型(短日46 日処理)と比較して、簡易夜冷処理施設の導入経費が増加するが、高単価時の収量が向上することで粗収益が増加するため、10a 当たり470 千円の所得向上が見込まれる(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 簡易夜冷処理施設は、遮熱フィルムを用いた短日処理施設に夜冷装置としてスポットエアコンを用いたもので、夜冷短日処理中は暗期(17:30〜8:30)を22℃設定とした。
  2. 育苗培土は窒素成分220mg/L のものを10.5cm ポットに充填し用いた。
  3. 収益性の試算の平均単価は、青果物流通統計月報(2005~2007 年)の主要都市の市場計の項目の卸売価格を用い、その他の経費については岩手県生産技術体系(H17)を一部改変したものを用いた。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
イチゴ促成栽培における省力的短日処理技術の開発、実証
予算区分
県単
研究期間
2004〜2007 年度
研究担当者
藤尾拓也、佐藤弘
発表論文等
藤尾・佐藤ら(2007) 園芸学研究6(別1),p422