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トマト養液土耕における誘電率土壌水分センサを利用した水分分布の制御

[要約]

トマト養液土耕において、誘電率土壌水分センサを目的とする深さに埋設し、出力値の変化から水分の到達を検知して潅水を停止する方法によって水分分布を制御できる。

[キーワード]

誘電率土壌水分センサ、少量多頻度給液、トマト、根域、土壌水分分布

[担当]

宮城農園研・園芸栽培部 野菜チーム

[代表連絡先]

電話022-383-8132

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

根域を適切な大きさに制限することができれば、養水分の貯留量が少なくなり、少量多頻度な給液によるきめ細かな養水分管理が可能となる。これまでに、隔離ベッドを利用して物理的に根域を制限する方法が確立されているが、隔離ベットの導入設置コストが大きいという問題がある。誘電率土壌水分センサ(以下、水分センサと称する)を所定の深さに埋設し、水分が目的の深さまで達した時点で潅水を停止するシステムを利用すると、土壌水分の垂直分布を制御できる。

[成果の内容・特徴]

  1. 水分センサを5 cm の深さに設置し、水分の到達を検知して潅水を停止する潅水制御によって、1回当たりの潅水量が少なくなり、潅水頻度が多くなる(表1)。
  2. それにより、土壌中での垂直方向の水分分布が制限される(図1表1)。
  3. 土壌の物理性(土性)に応じて、潅水頻度や1回当たりの潅水量が変化する(表1)。
  4. 1回当たりの潅水量、潅水頻度および根域の大きさの違いはトマトの生育に大きく影響する(図2)。
  5. このシステム(潅水開始時のマトリックポテンシャルを-6.2 kPa、センサの埋設深さを10 cm)を利用して、夏秋どり栽培の作型で8段摘心栽培を行った時の1株当たりの商品果収量は4 kg 程度となり、定量潅水した場合と同等以上の収量となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. ドリッパー(吐出量33 ml/分、Netafim 製)およびpF センサは株元から5 cm の距離に設置した。水分センサはドリッパー直下5 cm ないし10 cm の深さに埋設した。
  2. 水分センサは、商品名「Echo プローブ」(Decagon 社製)温度とEC の影響が少ないとされるEC-5 を用いた。
  3. 本システムでの潅水制御は、土壌のマトリックポテンシャルを指標として-6.2kPa 以下になった時点で開始し、開始時の体積水分率よりも3%水分率が上昇した時点で潅水を停止する。
  4. このシステムを利用することで、肥料成分や水の地下への浸透、流出を抑えることができる。
  5. システムの詳細については、平成18 年度成果情報「移動水検知センサを利用した給液制御」を参考とする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
根面境界層の形成を抑制する新しい養水分管理技術の確立
予算区分
受託(高度化事業)
研究期間
2005〜2007 年度
研究担当者
吉田千恵、龍野栄子、岩崎泰永