研究所トップ研究成果情報平成19年度

アブラナ科野菜害虫類に対する昆虫病原糸状菌3種混合散布の防除効果

[要約]

宿主範囲の異なる昆虫病原糸状原菌Paecilomyces fumosoroseus,Beauveria bassiana, Nomuraea rileyiを混合して散布すると,アブラナ科野菜圃場内に発生する複数の害虫類を同時に防除できる。

[キーワード]

昆虫病原糸状菌,Paecilomyces fumosoroseus,Beauveria bassiana,Nomuraea rileyi

[担当]

宮城農園研・園芸環境部・虫害チーム

[代表連絡先]

電話022-383-8125

[区分]

東北農業・基盤技術(病害虫)

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

アブラナ科野菜をはじめとする土地利用型作物において環境負荷低減型の害虫防除技術の必要性は高いが,現在は化学合成農薬の代替防除手段がきわめて少なく,化学合成殺虫剤に依存しな ければ栽培できないのが現状である。そこで,露地栽培においても使用可能と考えられる生物農薬として,宿主範囲の異なる昆虫病原糸状菌Paecilomyces fumosoroseus(SPf-1株),Beauveria bassiana(MG-Bb-1株),Nomuraea rileyi(SlNr-3株)に着目し,化学合成殺虫剤の補完手段として生物農薬を使用するのではなく,糸状菌製剤を中心とした防除技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. P. fumosoroseus,B. bassiana,N .rileyi を混合して散布すると,コナガ,ウワバ類,アオムシ,ヨトウガに対して高い防除効果が得られる。防除効果は,散布濃度をそれぞれが1× 10 分88 生子/mlになるように調整した場合にBT剤と同等からそれ以上の防除効果を示す。1×10分生子/mlの7日間隔散布が,もっとも効果的である(図−1)。
  2. 3菌種混合散布は,鱗翅目害虫だけでなくアブラムシ類の密度も抑制できる(図−1)。
  3. 3菌種混合散布は,露地栽培アブラナ科野菜に発生する主要害虫類を同時に防除でき,その被害を顕著に軽減できる(表−1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. P. fumosoroseusSPf-1株はコナガやモンシロチョウ,ヨトウガ幼虫など多くの鱗翅目害虫に病原性を示す。B. bassianaMG-Bb-1株はコナガやモンシロチョウ幼虫などに加え,アブラムシ類やコナジラミ類,アザミウマ類にも病原性を示す。N .rileyiSlNr-3株はハスモンヨトウやヨトウガ,ウワバ類幼虫に特異的に強い病原性を示す。散布圃場では,高湿度等の好適な条件が整えば,これらの害虫の死体からそれぞれの菌が発生することもある。
  2. 鱗翅目害虫の重要天敵と考えられるキンナガゴミムシ,アオゴミムシ,オオアトボシアオゴミムシ,セアカヒラタゴミムシおよびホシボシゴミムシ成虫に対して,悪影響は認められない。
  3. 供試した昆虫病原糸状菌の3種は,平成20年1月現在,農薬取締法に基づく農薬登録がされていないため,試験研究以外では使用できない。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
昆虫病原菌を基幹としたアブラナ科野菜害虫の防除体系の確立
予算区分
高度化事業
研究期間
2005〜2007年度
研究担当者
増田俊雄,宮田将秀(宮城農園研),江波義成,保積直史,川村容子(滋賀農技振セ),樋口俊男(出光興産),廣森創,西東力(静岡大学)