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夏秋期施設栽培イチゴにおける害虫防除体系
[要約]
イチゴの夏秋期施設栽培において、ハダニ類防除に天敵ミヤコカブリダニを放飼し、アザミウマ類の侵入抑制に近紫外線除去フィルムおよび防虫ネットを用いることを核とした防除体系により、化学合成殺虫剤の投下量を削減し、これら害虫被害を抑制できる。
[キーワード]
イチゴ、夏秋期栽培、ハダニ類、アザミウマ類、防除体系
[担当]
福島農総セ・生産環境部・作物保護グループ
[代表連絡先]
電話024-958-1716
[区分]
東北農業・基盤技術(病害虫)
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
イチゴの夏秋期栽培においては、冬春期栽培に比較してハダニ類、アザミウマ類など害虫の発生が多くなり、それに伴って農薬の投下量が多くなる。一方で、これらの害虫は薬剤抵抗性が発達しており農薬のみに依存した防除は困難になってきている。そこで、生物的・物理的防除を中心とした害虫防除体系を構築する。
[成果の内容・特徴]
- ハダニ類に対しては、ミヤコカブリダニを開花始期を目安に放飼することにより、ほ場に定着し、10月末の収穫終了時まで長期間ハダニ類の発生密度を抑制する(図1)。
- アザミウマ類に対しては、施設の外装フィルムとして近紫外線除去フィルム(390〜380nm以下の波長不透過)を用いること、施設の開口部を防虫ネット(目合い1mm以下)で被覆することによりアザミウマ類の施設内への侵入を抑制する(図2、3)。
- これらの成果を基幹とした夏秋期栽培イチゴにおける害虫防除体系(図4)により、害虫被害を抑制し、化学合成殺虫剤の投下量を削減できる。
[成果の活用面・留意点]
- ミヤコカブリダニはハダニ類の発生前か寄生密度が低いうちに放飼する必要があるため、放飼前までにミヤコカブリダニに対して長期間影響しない殺ダニ剤の散布を行う。
- ミヤコカブリダニ放飼後、防除効果が十分でない場合には、天敵の追加放飼や天敵に影響の少ない農薬を補完的に使用する。また、ハダニ類以外の害虫に対しては、天敵に影響の少ない防除対策を講じる。
- アザミウマ類の侵入抑制効果は、近紫外線除去フィルム、防虫ネットそれぞれで得られるが、これらを組み合わせることで更に高い効果が得られる。また、これらの資材はアブラムシ類、コナジラミ類などの侵入抑制効果も期待できる。なお、侵入を完全に防ぐことはできないので、発生状況に応じて適切な防除を行う。
- 近紫外線除去フィルムを展張すると、受粉媒介昆虫としてミツバチが使用できないので、マルハナバチ類を使用する。
- 夏期高温条件では、防虫ネットの種類によっては施設内が高温になるので、換気設備を整えたり、通気性のよい資材を選択する。
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- イチゴの夏秋どり作型における害虫の生態の解明と対策技術の開発
- 予算区分
- 交付金プロ(寒冷地イチゴ)
- 研究期間
- 2003 〜 2007 年度
- 研究担当者
- 中村淳、荒川昭弘、佐々木正剛、宮田将秀(宮城農園研)、増田俊雄(宮城農園研)