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パイプハウスにおける空気膜二重構造と開閉式保温カーテンの保温性

[要約]

屋根面を空気膜二重構造とすると、日中の透過日射量は低下するが、ハウス外への 放熱量が少ないので、開閉式保温カーテン(日中開)と比べて室温は高く、地温と地中伝 熱量は同程度となる。夜間の放熱量は開閉式保温カーテン(夜間閉)とほぼ同等である。

[キーワード]

空気膜二重構造、開閉式保温カーテン、保温性、熱収支

[担当]

宮城農園研・園芸栽培部・野菜チーム

[代表連絡先]

電話022-383-8132

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

空気膜二重構造をハウスの被覆に応用すると施設の保温性が向上するとされているが、施設内微気象や熱収支特性の評価についての報告は少ない。パイプハウスの屋根面を空気膜二重構造とした場合(以下、空気膜ハウスと称する)と、日中開放し夕方から閉鎖する一層の開閉式保温カーテンを用いる場合(以下、対照ハウスと称する)について、施設内微気象および熱収支を比較し、空気膜ハウスの保温効果を熱収支の面から調査する。また、空気膜二重構造と保温カーテンを組み合わせた場合の保温性を評価する。

[成果の内容・特徴]

  1. 施設内気温は、日中は空気膜ハウスがやや高く、夜間はほぼ同じである。一方、地温はほぼ同等に推移する(図1上)。
  2. 空気膜ハウスは対照ハウスよりも日射透過量が少なくなり、吸収日射量は少なくなる。しかし、気温が高くなるために、日中の地中伝熱量はほぼ同じである。(図1 下)
  3. 対照ハウスと空気膜ハウスでは、夜間の熱貫流量はほぼ同等である(図1下)。
  4. 空気膜二重構造と開閉式保温カーテンを組み合わせた場合のハウス内平均気温を比較すると、空気膜ハウス+開閉式保温カーテン>空気膜ハウス>一重(慣行)被覆+開閉式保温カーテン>一重(慣行)被覆の順となる(表1)。
  5. ホウレンソウの生育をみると、空気膜ハウス+開閉式保温カーテン、空気膜ハウス、一重(慣行)被覆+開閉式保温カーテンで調製重は同等であるが、平均気温に対応して草丈は高くなる。空気膜ハウスと開閉式保温カーテンの組み合わせにより、より保温効果が高まり、ホウレンソウの生育が促進される(表1、図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 熱貫流量は、熱貫流量(W/m2)=(床面積/表面積)×(吸収日射量−地中伝熱量)の式で求めた(床面積=10 m×4.5 m=45 m2 表面積=9.056×2+(2.49+1.31)×10= 56.10 m2保温比(床面積/表面積)=0.802)。
  2. 吸収日射量は、吸収日射量(W/m2)=下向き日射量−上向き日射量でもとめた。
  3. 地中伝熱量は、地中伝熱量(w/m2)=地表2 cm 以下の伝熱量*1+地表2 cm 以上の伝熱量*2 でもとめた(*1:熱流板MF-200 を地表面下2 cm に埋設して測定、*2:地表面下1 cm に熱電対を埋設し、地温変化から計算)。
  4. 日中25℃を目標に、ハウス側面を開閉して換気を行ったが、気温が低下する12 月〜2月下旬は日中もハウスを閉め切った状態となることが多かった。
  5. 空気膜二重構造ハウスの詳細については平成15 年度成果情報「側面開放部を確保した空気膜二重構造パイプハウスの微気象」および平成18 年度成果情報「空気膜二重構造の利用によるパイプハウスの保温性向上とホウレンソウの生育促進」を参考とする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
研究課題名:寒冷地・積雪下における冬春野菜の安定
予算区分
受託(高度化事業)
研究期間
2005〜2007 年度
研究担当者
吉田千恵、岩崎泰永、高野岩雄