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放射性物質飛散時の小麦生育量が子実の放射性セシウム濃度に及ぼす影響
[要約]
放射性物質飛散時に生育量が大きい節間伸長開始期の小麦では子実の放射性セシウム濃度が高く、生育量が小さい幼穂形成期の小麦では放射性セシウム濃度が低かった。
[キーワード]
小麦、子実、放射性セシウム、生育量
[担当]
福島農総セ・作物園芸部
[代表連絡先]
電話024-958-1720
[区分]
東北農業・作物(畑作物栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
2011年3月11日の東日本大震災により東京電力福島第一原発の原子炉で放射能汚染事故が発生し、その際放出された放射性セシウムがほ場で生育中の小麦に付着したと考えられた。当時の生育量が付着程度に影響すると考えられることから、播種期が異なり放射性物質飛散時の生育量に差がある小麦について、その子実中の放射性物質濃度を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 灰色低地土で栽培した福島県の小麦奨励品種「ふくあかり」において早播(10月8日播種)から極晩播(11月20日播種)までの播種時期の異なる小麦を調査したところ、3月28日には早播で節間伸長開始期、極晩播では幼穂形成期と生育差があり、草丈が早播で長く、茎数は標播が多い(表1)。また、3月28日の生育指数(草丈×平方メートル当たり茎数)は早播が最も大きく、播種期が遅くなるにつれ低下する(表1)。
- 子実の放射性セシウム濃度は播種期の早いものほど高いが、いずれも国の暫定基準値の500Bq/kg以下である(表2)。
- 3月28日の生育指数と子実の放射性セシウム濃度には、高い正の相関がみられる。そのため、放射性物質飛散時に生育が旺盛であったものに、より多く付着したことにより、放射性セシウム濃度が高くなったと考えられる(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は放射性物質飛散時の影響が大きかったことを示しており、経根由来による土壌中からの放射性セシウム吸収量については今後検討する必要がある。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 麦類奨励品種決定調査
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2011年度
- 研究担当者
- 遠藤あかり、二瓶直登、荒井義光、齋藤隆、竹内恵