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ナタネに対する放射性セシウムの影響と油への移行

[要約]

福島県内の2011年産ナタネ子実では暫定規制値(500Bq/kg)を超過したものが見られ、原発事故由来の放射性降下物を葉面吸収したことが一因と考えられる。しかし、子実中の放射性セシウムは搾出した油へはほとんど移行しない。

[キーワード]

ナタネ、ナタネ油、放射性セシウム

[担当]

福島農総セ・作物園芸部

[代表連絡先]

電話024-958-1723

[区分]

東北農業・作物(畑作物栽培)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

2011年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故により、福島県内外の広範囲に放射性物質が飛散し、放射性降下物が生育中のナタネに付着したと考えられる。このため、県内産ナタネの汚染状況を把握するとともに、ナタネ搾油における放射性物質の動態について明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 福島県内の2011年産ナタネについて、主な産地5カ所における子実の放射性セシウム濃度は98〜667Bq/kgで、暫定規制値(500Bq/kg)を超過したものが見られる(表1)。これは、ナタネに付着した放射性降下物が葉面吸収されたことが一因と考えられる。
  2. 子実と土壌の放射性セシウム濃度には必ずしも相関が見られず(表1)、飛散時におけるナタネ生育ステージの地域差や、生育の良否によるナタネ被度(ナタネが地表面を覆っている割合)の差などが子実中の放射性セシウム濃度に差を生じた一因と考えられる。
  3. 暫定規制値を超えたナタネ子実でも、子実中の放射性セシウムは搾出した油へはほとんど移行せず(表2)、放射性セシウムの土壌濃度が高い圃場でもナタネの営農利用は可能であると考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. ナタネ子実の搾油率が約30%の場合、油粕の放射性セシウム濃度は約140%に濃縮するものと試算されるため、子実の濃度によっては油粕利用に注意が必要である。
  2. 放射性降下物の直接的な影響がない、ナタネの経根由来の放射性セシウム吸収については、今後検討する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
農作物の放射性物質の吸収量の解明
予算区分
科学技術戦略維持費
研究期間
2011年度
研究担当者
平山孝、関澤春仁、佐藤睦人(福島農総セ)