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未知のイチゴ品種を選好する消費者の購買意思決定プロセス

[要約]

未知の品種でも購入を検討し選好に至る「出くわし型購買(偶発的選好)」は、多様な品種を選好する消費者類型、品種名による地元育成品種としての地域的な繋がりや好意的なイメージ、適切な価格設定といった要素によってもたらされる。

[キーワード]

購買意思決定プロセス、考慮集合、品種、イチゴ

[担当]

福島農総セ・企画経営部・経営・農作業科

[代表連絡先]

電話024-958-1700

[区分]

東北農業・基盤技術(経営)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

購買意思決定プロセスにおいては、既知のブランドから構成される知名集合から購買を検討する対象となる考慮集合、最終的な選好へと至るブランドカテゴライゼーションが知られている。ここでは、県による新品種の育成が盛んなイチゴを対象として品種の選択に関する購買意思決定プロセスにおける知名・考慮・選好の各段階を分析し、知名のない品種であっても選好に至る「出くわし型購買(偶発的選好)」の仕組みを明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 考慮集合に含まれる品種数は、標準品種である「とちおとめ」と比較品種の価格水準を100 円の価格差を設けた場合に比べ、同水準とした場合に増加する(表1)。
  2. 購買意思決定プロセスにおいて、知名、考慮、選好の各段階からウォード法によるクラスタ分析で消費者を分類したところ、通常の知名集合から絞込みを行う類型(類型1及び類型2)に加えて、考慮集合が知名集合を上回る「出くわし型購買」を行う可能性が高いと考えられる消費者類型(類型3)の存在が示され、その割合はおよそ30%である(図1図2)。そのほか、品種名に関する知識に乏しく最終的に「とちおとめ」を選択した類型(類型1)、品種名を多く知っているが、既知の品種からのみ選択する類型(類型2)、イチゴを購入しない類型(類型4)がある。
  3. 考慮集合が知名集合を上回る消費者類型では実際に多くの品種が選好されており、そのうち「出くわし型購買」による選好も「ふくはる香」「もういっこ」「ふくあや香」といった品種で多い(表2)。
  4. 最終的な選好理由についてテキスト分析を行った結果、「出くわし型購買」でない「とちおとめ」において「安い、手頃、馴染み」といった記述、「出くわし型購買」である「もういっこ」において「名前、かわいい」、同様に、福島県育成品種の「ふくはる香」では調査段階で育成地を示していないにも関わらず「福島、地元」という記述が見られ、予め知らない品種でも選好する理由を示唆する。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本研究成果は、インターネット調査による模擬的な選択行動をもとに分析したものであり、提示したのは品種名と価格の情報のみとし、育成地も伏せられている。従って、選好段階から購買に至るプロセスは未検証であるため、活用に当たっては果実品質の管理や販売チャネルとの適合といった他の要素との整合性に留意する必要がある。
  2. 消費者の調査は、首都圏及び福島県の成人女性対象としてインターネット調査により行い、それぞれ500 名を回収した。供試した品種は「とちおとめ」「あまおう」「紅ほっぺ」「さちのか」「ふくはる香」「さがほのか」「もういっこ」「ふくあや香」であり、「とちおとめ」を398 円、「あまおう」を780 円とした上で、他の品種を498 円とした場合と398 円とした場合の2 種類の調査票により知名(複数選択)・考慮(複数選択)・選好(考慮から1品種選択)の有無、選好理由について調査した。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
新品種の育成による青果物ブランド化の消費者行動論的研究
予算区分
園芸振興松島財団研究助成
研究期間
2010 年度
研究担当者
半杭真一
発表論文等
半杭(2011)フードシステム研究、18(3): 135-148