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草生栽培の草と同時に土壌を剥ぎ取れば、放射性物質を効率的に除去できる
[要約]
草生栽培が行われている果樹園において、ソッドカッターを利用して3cmの厚さで表層を除去すると土壌中の放射性物質(セシウム)が63%減少する。
[キーワード]
除染、果樹園、草生栽培、放射性物質、ソッドカッター
[担当]
福島県農業総合センター企画経営部経営・農作業科
[代表連絡先]
電話024-958-1700
[区分]
東北農業・基盤技術(作業技術)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
農地に降下した放射性物質は大部分が土壌表層近くに存在すると考えられるが、これら表層土壌を効率的に除去する手法を検討し、農地の放射性物質を減ずる技術を開発する。
ソッドカッター(図1)は、ゴルフ場などの芝を切り取るときに利用される機械であるが、草生栽培の雑草等を芝のように剥ぎ取れれば、表層にある放射性物質をあまり分散させずに効率的に放射性物質の除去が可能である。
[成果の内容・特徴]
- 草がほ場一面に覆われていることを確認後、ソッドカッターで表層土壌を帯状に切り取り、フロントローダーを用いて表層土壌を剥ぎ取る手法を用いる(図1、表1)。表層土壌の剥ぎ取り手法は、フロントローダーのバケットにより切り取った土壌を引いて剥ぎ取る手法(図1)で行う。
- ソッドカッターの切り取り速度は、0.49km/h である。フロントローダーによる剥ぎ取り時間は222 秒/10 平方メートルである(表2)。ただし、切り取り時において帯状に切り取った隣接部分に切り残しが発生し、剥ぎ取り能率は落ちている。
- 3cm厚の設定で表層土壌を剥ぎ取ると、土壌中の放射性物質(セシウム)が剥ぎ取り前の63%減になる(表3)。
- 当試験から得られたデータから表土を3cmの厚さで切り取るとすると、10a当たりの切り取り時間は303 分、剥ぎ取り時間は400 分となる。また、剥ぎ取った土量は、25.5t となる。
- 作業の留意点として、ソッドカッターは、走行車輪が小さいため、草高が5cm以上高い場合やぬかるんでいる状態などでは作業が困難である。また、剥ぎ取り作業において、剥ぎ取り能率の低下を招くので、ソッドカッターによる切り取り漏れがないよう注意する。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象 放射性物質が降下し除染が必要な地域のうち草生栽培を行っている果樹園
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
東北、関東において、放射性物質が降下し除染が必要な地域のうち草生栽培を行っている果樹園
- その他
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- 土壌表面に残留する放射性物質の除去・低減技術の開発
- 予算区分
- 科学技術戦略推進費(福島県の放射性高レベル負荷地帯における各種農作物によ
る放射性セシウムのリスク低減技術の開発)
- 研究期間
- 2011 年度
- 研究担当者
- 松葉隆幸、大野光