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各種夏作野菜への土壌中の放射性セシウムの移行係数

[要約]

黒ボク土畑において平成23年に栽培した夏作野菜15品目への放射性セシウムの移行係数は、0.0004〜0.0055である。野菜類への移行は全般的に少なく、特に果菜類の係数は低い傾向にある。

[キーワード]

夏作野菜、放射性セシウム、移行係数

[担当]

環境保全型農業システム・環境保全型畑作

[代表連絡先]

電話024-593-5151

[研究所名]

東北農業研究センター・環境保全型研究領域

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が大気中に放出された。事故直後はそのフォールアウトによって、農作物が汚染された。同時に放射性物質は土壌にも降下し、今後は、半減期が長く土壌中での移動性が低いため作土に長期間残留する放射性セシウムが、農産物の主要な汚染核種になると考えられる。そのため、土壌から農産物への放射性セシウムの移行動態を把握することは重要であるが、野菜についてのデータはほとんど報告されていない。そこで、今回の事故に伴うフォールアウトの影響を受けた土壌において夏作野菜を栽培し、放射性セシウムの移行係数を算出する。

[成果の内容・特徴]

  1. 福島市内の淡色黒ボク土畑(Cs134+137 941〜1698Bq/kg, pH6.3, 交換性加里93.6mg/100g, CEC 24.5me/100g)、または、腐植質黒ボク土畑(Cs134+137 872〜1359Bq/kg, pH6.7, 交換性加里 87.6mg/100g, CEC 30.2me/100g)において、平成23年に栽培した夏作野菜15品目の可食部への放射性セシウムの移行係数(=野菜中の放射性セシウム濃度 Bq/kg生重/土壌中の放射性セシウム濃度 Bq/kg乾土、放射性セシウムはCs-134とCs-137の合計)は、0.0004〜0.0055である(図1表1)。
  2. 放射性セシウム濃度および移行係数は、葉菜類、いも・根菜類で比較的高く、果菜類で低い傾向にある。しかし、葉菜類でもネギでは低く、品目によってばらつきがある。放射性セシウム濃度は最も高いブロッコリーでも6.49Bq/kgで、野菜の暫定基準値より遙かに低い(図1)。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象 行政・普及関係者
    東京電力福島第一原子力発電所の事故後に栽培された野菜に関する数少ないデータであり、行政部局や普及機関における施策や普及活動上の情報として利用される。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 全国
  3. その他
    本成果情報で示した移行係数は、農林水産省のプレスリリース(平成23年5月27日)添付資料「農地土壌中の放射性セシウムの野菜類及び果実類への移行の程度」において科学論文に報告されたデータとして示された移行係数0.0004〜0.039の範囲内である。

[具体的データ]

[その他]

中課題名
寒冷地の畑・野菜作における省資源・環境保全型生産技術体系の開発
中課題番号
153a0
予算区分
交付金
研究期間
2011
研究担当者
村山徹、木方展治(農環研)、木村武(中央農研)
発表論文等