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果皮が黒緑色で外観に特徴がある大玉スイカ新品種「秋農試38号」

[要約]

「秋農試38号」は、黒緑色の果皮で注目されやすい赤肉大玉系のF1スイカである。この品種は、県オリジナル縞皮スイカ「あきた夏丸」と同等以上の果実特性を持ち、既存の黒皮系スイカと比較して、糖度が高く、シャリ感が強いため、ブランド化に適する。

[キーワード]

黒皮、大玉スイカ、秋農試38号、F1、あきた夏丸、新品種

[担当]

秋田農技セ農試・野菜・花き部・園芸育種種苗担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

秋田県が育成したオリジナルの大玉縞皮スイカ「あきた夏丸」は、栽培の容易さと食味の良さから、本県の主力品種として定着している(2011 年度の作付面積は約130ha)。また、品種名を明示した販売促進活動の結果、「あきた夏丸」の認知度は高まり、他品種より高単価で販売されている。さらに、より効果的に本県産スイカの良食味を市場や消費者に認知してもらうためには、「あきた夏丸」の果実品質を維持しつつ、見た目に特徴をもたせた姉妹品種を育成することが有効であると考え、その一つとして外観が黒緑色の「あきた夏丸」タイプの品種育成を図る。

[成果の内容・特徴]

  1. 「秋農試38号」は、市販黒皮系スイカ「黒太陽」と農業試験場の育成系統を素材にして、本県の気象条件の下で栽培、選抜を繰り返して固定した黒皮系と縞皮系のF1品種である。なお、「あきた夏丸」とは母本は異なるが、父本は同一の姉妹品種である(図1)。
  2. 果実外部特性は、平均果重が8.4kg 程の中大玉である。果皮が黒緑色であるため、太い条斑が際立ち、条斑の目立たない従来の黒皮スイカ「タヒチ」(対照品種)と外観で差別化できる。果実は変形しにくく、揃いが良い等、「タヒチ」より外観評価が高く、「あきた夏丸」(参考品種)より果面の凸凹が少ない(表1写真1)。
  3. 果実内部特性は、「タヒチ」と比べて果肉が濃い鮮やかな桃赤色で、黄帯、空洞が少ない(表2写真1)。糖度が12.5 %と高く、肉質は「あきた夏丸」と同様に硬めで歯ごたえがあり、シャリ感が強い。また、黒皮系スイカ特有の臭いがなく、食味においては、「タヒチ」より優れる。さらに「あきた夏丸」より黄帯が少なく果皮の厚さも薄い(表2)。
  4. 「秋農試38号」は、既存の黒皮スイカ「タヒチ」と比較して果実外観、内部共に優れ、「あきた夏丸」との比較でも、同等以上の果実特性を保持しているため、外観で差別化した県産スイカのブランド化に適している(表1表2写真1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象は、秋田県内の生産団体及び直売所等に出荷する生産者である。なお、種子の供給については、当面秋田県内限定とする。
  2. 草勢や成熟日数は「あきた夏丸」とほとんど変わらないため、施肥量等の栽培方法はこれまでの「あきた夏丸」に準ずる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
秋田ブランド野菜産地拡大・強化を目指したオリジナル品種育成
予算区分
県単
研究期間
1996 〜 2011 年度
研究担当者
椿信一、佐藤友博、檜森靖則、佐藤孝夫
発表論文等
「秋農試38号」品種登録出願2011 年3 月30 日(第25769 号)