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赤かび病の無人ヘリ防除計画作成に対応する幼穂長による小麦の開花期予測

[要約]

小麦では、「幼穂長と日平均積算気温による出穂期予測」と「発育下限温度と有効積算温度による出穂期からの開花期予測」を組み合わせることにより、最大で60 日程度前から開花期を予測でき、無人ヘリによる赤かび病防除等の作業計画作成に活用できる。

[キーワード]

小麦、幼穂長、出穂期、開花期、予測

[担当]

宮城県古川農業試験場・水田利用部

[代表連絡先]

電話0229-26-5106

[区分]

東北農業・畑作物(畑作物栽培)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

小麦の赤かび病防除適期は開花始期から開花期であるが、小麦は生育ステージの年次間差が大きいため適期を逸する事例が多く、開花期の正確な予測技術が必要となっている。また、無人ヘリによる防除の場合、散布スケジュールが3月下旬から4月上旬頃(最大で開花期の50 〜 60 日前)に決定されることも多く、より早期に開花期を予測する手法が求められる。以前に小麦品種「あおばの恋」では、「幼穂長による開花期予測」を報告したが(2011 年度普及成果情報東北農業・作物)、その他の小麦品種においても同様に幼穂長を用いた開花期予測を検討し、幅広い小麦品種で無人ヘリ防除の計画作成に対応可能な開花期予測手法を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 小麦では、「幼穂長の常用対数」を用いて「出穂期に達するまでの日平均積算気温」を推定することが可能である(図1図2)。
  2. 小麦の出穂から開花までの日数は概ね気温に支配されており、恒温器で得られた「平均気温と出穂期から開花期までの日数」の関係は自然条件においても適用できる(図3
  3. 「シラネコムギ」、「ゆきちから」、「ナンブコムギ」の出穂期から開花期の期間における発育下限温度はそれぞれ5.6 度C、5.1 度C、5.7 度C、有効積算温度はそれぞれ91.7 度C、100度C、88.5 度Cと推定され(図3、シラネコムギ以外は図省略)、これらを用いて出穂期から開花期までの日数を推定することができる。
  4. 小麦では、「幼穂長による出穂期予測」と「出穂期からの開花期予測」を組み合わせることにより、概ね3日程度の誤差で「幼穂長による開花期予測」が可能である(図4)。
  5. 3月下旬〜4月上旬(開花期の40 〜 60 日前頃)の幼穂長から開花期を予測できるため、無人ヘリによる赤かび病防除等の作業計画作成に活用できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象は、東北地域の小麦栽培研究者、栽培指導者である。
  2. 普及予定地域は東北地域、普及予定面積は5,000ha 程度である。
  3. その他
    1. 予測に用いる幼穂長の値は、主茎5本前後の平均値を用いる。
    2. 出穂期に達するまでの日数及び出穂期から開花期までの日数を予測するには、その地域における調査翌日からの日平均気温平年値データを用いて行う。
    3. 最大で60 日程度前から開花期を予測できるが、予測誤差を小さくするため、防除計画作成上可能な限り遅い時期に幼穂長の確認を行う。

[具体的データ]

(宮城県古川農業試験場)

[その他]

研究課題名
寒冷地における小麦の開花期予測と追加防除要否判定技術の開発
予算区分
委託プロ
研究期間
2008 〜 2012 年度
研究担当者
安藤慎一朗、宮野法近、神崎正明、大場淳司、辻英明