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黒星病真性抵抗性リンゴ新品種「あおり25」

[要約]

リンゴ新品種「あおり25」は、さっぱりとした酸味と肉質の良さから、生食のみならず調理・加工用途への適性を有するとともに、黒星病抵抗性遺伝子Vfを有する真性抵抗性の晩生種で減農薬栽培が可能である。

[キーワード]

リンゴ、新品種、黒星病抵抗性、「あおり25」、晩生種、加工適性

[担当]

青森産技セ・りんご研・品種開発部、同・弘前地域研・バイオテクノロジー部

[代表連絡先]

電話0172-52-2331

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

次世代のリンゴ産業を支えるため、より優れた食味や貯蔵性を持つ品種、農薬を削減できる耐病性品種など、生産現場の要望や多様な消費者ニーズに応えられる優れた特性を有する品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 育成経過
    本品種は、1985年に「メロー」に「リバティ」を交配し、育成した赤色品種で、2004年に「青り25号」として二次選抜され、2011年9月21日に品種名「あおり25」として品種登録出願し、2012年1月13日に出願公表となった。
  2. 特性概要
    1. 開花日から落花日までの生育ステージは「ふじ」より3日程度早い。
    2. 樹の生育特性は開張性で、細かい枝が多い。樹勢はやや弱めである。早期落果、後期落果はともにみられない。
    3. 自家不和合性(S)遺伝子型はS35で、「ふじ」、「つがる」、「王林」等主要品種と和合性である。
    4. 育成地(黒石市)において10月下旬収穫の晩生種である。
    5. 大きさ270g程度とやや小玉で、果色は紅色で縞が不明瞭に入る。果形は扁円形である。果肉硬度は16ポンド程度、糖度は14%程度、酸度は0.6〜0.7g/100mlである(表1図1)。
    6. 酸味が強いが、果汁が多く、肉質はクリスプで食味は良い。つる割れ、心かび、みつ入り果の発生は少ない。つるさび果が発生する。摘果剤(NAC 水和剤)は、ほとん ど効果がない。
    7. 果肉は加熱調理しても崩れにくく、タルトタタンやシードル等の酸味や風味を生かした調理や加工用途への適性がある。
    8. 貯蔵期間は普通冷蔵で3か月程度で、2月上旬頃より品質の低下がみられる。貯蔵障害はみられないが、油上がりがある。
    9. 黒星病真性抵抗性Vf 遺伝子の既知のDNA マーカー(M.Xu et al. 2001)を有し、分生子の接種試験で抵抗性を示すことが確認されている(表2図2)。斑点落葉病に強く、その他の病害虫に対しては通常の防除で問題ない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象:リンゴ生産者、普及指導員、JA営農指導員、市場関係者、販売関係者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:青森県内全域
  3. その他:当面は、減農薬栽培等を行っている生産者を対象とし、会員制によって普及する。

[具体的データ]

((地独)青森県産業技術センターりんご研究所)

[その他]

研究課題名
りんご新品種の登録と普及に向けた栽培特性の把握と生産技術の確立
予算区分
県交付金
研究期間
2009〜2012年度
研究担当者
工藤剛、五十嵐恵、深澤(赤田)朝子、後藤聡、今智之
発表論文等
品種登録出願(2011.9.21)、出願番号「第26329号」、出願公表(2012.1.13)