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荷傷みの少ないオウトウの新型容器
[要約]
新型容器は、ホールトレーについた穴に果梗を入れ、2 枚の伸縮性フィルムシートで果実を挟み固定する形態である。新型容器は、輸送中に生じる衝撃や振動に対して、高い荷傷み防止効果が期待できることから、国内長距離輸送および輸出用容器として有望である。
[キーワード]
オウトウ、荷傷み防止、新型容器、長距離輸送、輸出
[担当]
山形県農業総合研究センター・園芸試験場・果樹部
山形県村山総合支庁産業経済部農業技術普及課産地研究室
[代表連絡先]
電話0237-84-4125
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
オウトウは軟らかく、鮮度低下が早い果実であるため、輸送時の振動や衝撃により「オセ果」(損傷果)や腐敗果などの荷傷みが発生しやすい。そこで、長距離輸送においても果実の荷傷みが少ない新型容器を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 新型容器は、ホールトレー(ポリスチレンペーパー製)についた穴に果梗を入れ、2 枚の伸縮性フィルムシートで果実を挟み固定する形態であり、果実が損傷する要因である果実と容器、果実同士、果実と果梗の接触が少ない構造である(図1、図2)。
- トラックを利用した国内長距離輸送および航空機を利用した輸出では、果実の損傷および腐敗の発生はほとんどみられず、500g パック(ばら詰め)より品質保持に優れる(表1)。
- 香港へ輸出した際の商品性は、輸送後約10度Cで保管した場合、「佐藤錦」で収穫5〜8日後、「紅秀峰」で収穫8 日後まで保たれる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象 オウトウ生産者、流通・販売業者
- 普及予定地域 オウトウ生産地域(新型容器は、平成25 年春に販売予定)
- その他
- 新型容器のフルサイズは280×209×47mm(A4)で45 果入り、ハーフサイズは204×147×57mm(A5)で18 果入りを使用した。
- 場内試験では、「トラック1,000km 相当」を再現した輸送梱包試験機(アイデックス株式会社製BF-50UT、周波数:10〜40Hz、掃引時間:60 秒間、掃引回数:20 回、加速度:40Hz 時に24.5m/s2(2.5G))で行った。
- 福岡への輸送は、常温宅配便(20〜25度C)で行い、輸送後は約12度Cで保管した。
- 香港への輸送は、山形(寒河江)〜成田国際空港〜香港国際空港〜香港市街地の行程で行った。輸送は常温(20〜25度C)で行い、香港国際空港内の検疫時および輸送後は約10度Cで保管した。
- 新型容器の中央部に位置する果実は、外周部よりフィルムシートによる圧力(固定力)がかかりにくい場合があるため、やや大きめの果実を配置するのが望ましい。
- 「茎付果実収容装置」として特許出願中(特願2011-274992 号、平成23 年12 月15 日)。
[具体的データ]




( 山形県農業総合研究センター園芸試験場)
[その他]
- 研究課題名
- おいしいサクランボをどこにでも送れる損傷ゼロパッケージ技術の開発
- 国産果実の輸出促進に向けた低コスト生産・流通システムの開発
- 予算区分
- 受託
- 研究期間
- 2009〜2012 年度
- 研究担当者
- 仲條誉志幸、奥山聡、原田芳郎、小野寺玲子、今部恵里、佐藤光明、高橋和博、米野智弥、今野勉、佐藤康一、須藤佐藏
- 発表論文等
- 仲條誉志幸(2012)日本包装学会誌.21(5):357-362.