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リンゴ新規鮮度保持剤「1−MCP剤」の利用上の留意点

[要約]

効果的な処理方法は、収穫後直ちに10度C以下の低温で貯蔵し1-MCP 処理する。エチレン生成量の多い品種は、収穫直後、4度Cの条件下で24 時間処理する。エチレン生成量が少ない品種は、収穫後4度Cの貯蔵で収穫3 日後以内の処理において効果が期待できる。

[キーワード]

リンゴ、鮮度保持、1−MCP

[担当]

岩手県農業研究センター 技術部 果樹研究室

[代表連絡先]

電話0197-68-4419

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

リンゴは糖度の高い完熟したものが消費者から求められているが、完熟した果実は果肉の軟化が進みやすく、食感も低下しやすい。
しかし、近年、果実の老化を早める原因物質であるエチレンの生理作用を制御する新規鮮度保持剤(1-methylcyclopropene,1-MCP)による長期鮮度保持効果(収穫果実の硬度保持、油上がりの抑制など)が確認されている。
そこで、1−MCP剤の安定した鮮度保持効果が得られる処理方法を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. エチレン生成量は品種毎に異なり、「きおう」、「つがる」、「黄香」は生成量が多い。これらの品種は貯蔵温度を10度C以下にすることでエチレンの生成を抑制できる ことから収穫後低温で保管する。(図1)。
  2. エチレン生成量の多い品種は、収穫直後、4度Cの条件下で24 時間処理することで十分効果が得られる(図2)。
  3. エチレン生成量が少ない品種は、収穫後4度Cで貯蔵することで収穫3日後の処理においても鮮度保持効果が期待できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 「ふじ」の蜜入りの減少を抑制する効果が期待できる(表1)。
  2. 「シナノゴールド」は1-MCP の処理・無処理に関わらず長期貯蔵後、室温に放置すると果肉褐変障害が発生する恐れがある。
  3. 蜜褐変や果肉褐変などの障害を抑制できない場合もある。
  4. 収穫した果実の成熟具合、収穫後の処理時期などによって効果が期待できないことがある。
  5. 処理した果実は低温・湿度を保つこと。
  6. 定期的に貯蔵庫内の換気を行なうこと。
  7. 定期的に鮮度保持効果を確認し、果実品質が劣化しないうちに販売すること。
  8. 1-MCP の鮮度保持効果が確認されていない品種については、念のため鮮度保持効果を確認してから販売する。

[具体的データ]

( 岩手県農業研究センター)

[その他]

研究課題名
リンゴにおける長期果実鮮度保持技術の確立
予算区分
園芸振興松島財団研究助成
研究期間
2010〜2011 年度
研究担当者
畠山隆幸、小原繁