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リンゴのクサギカメムシに対する2系統薬剤を組み合わせた散布体系の防除効果
[要約]
リンゴ園で散布したネオニコチノイド剤と合成ピレスロイド剤のクサギカメムシ成虫に対する残効は長く、これら2系統の薬剤を組み合わせた散布体系によって果実被害を軽減できる。
[キーワード]
クサギカメムシ、ネオニコチノイド剤、合成ピレスロイド剤、リンゴ
[担当]
秋田果樹試・リンゴ部
[代表連絡先]
電話0182-25-4224
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
VA研究成果情報LUE
[背景・ねらい]
リンゴ果実を加害するカメムシ類のうち、秋田県ではクサギカメムシが優占種である。現在、リンゴ園における本種の防除は、個々の生産者が園内への飛来状況を観察し、必要に応じて薬剤散布している。このため、本種成虫の越冬密度が高い年には、薬剤散布回数の増加が予想される。このような年に、慣行のリンゴ園で定期的に実施している薬剤散布において、本種に対しても防除効果の高い薬剤を使用すれば、他の害虫の防除と同時に、本種による果実被害を効率的に軽減できる可能性がある。ネオニコチノイド剤と合成ピレスロイド剤は、カメムシ類に対する防除効果が高いことが報告されているが、これらを慣行の薬剤防除体系に組み込んだ場合の実用性は明らかでない。そこで、これらの薬剤を組み合わせたリンゴの薬剤散布体系(以下、カメムシ防除散布体系、表1)のクサギカメムシ成虫に対する防除効果を検証する。
[成果の内容・特徴]
- 5月中旬〜8月上旬まで、クサギカメムシ成虫を定期的に果実に放飼した試験で、カメムシ防除散布体系におけるリンゴ果実への加害数は、殺虫剤無散布の約10 分の1、慣行防除体系の約5分の1に軽減される(図1)。
- カメムシ防除散布体系において、主要害虫(モモシンクイガ、ハマキムシ類、キンモンホソガなど)による被害はほとんど観察されない(データ略)。
- 以上の結果から、クサギカメムシ成虫の越冬密度が高い年には、ネオニコチノイド剤と合成ピレスロイド剤を組み合わせた薬剤散布体系によって、効率的に果実被害を軽減できる。
[成果の活用面・留意点]
- 合成ピレスロイド剤とネオニコチノイド剤は天敵類に悪影響を及ぼすので、カメムシ防除散布体系は、クサギカメムシ成虫の越冬密度が高い年に実施する。
[具体的データ]


(舟山 健)
[その他]
- 研究課題名
- 近年多発生しているリンゴ害虫2種に対する効率的防除体系の確立
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2005〜2009 年度
- 研究担当者
- 舟山 健
- 発表論文等
- Funayama, K. (2012) Appl. Entomol. Zool. 47: 75-78.