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高分子吸水シートの被覆によりモモ主幹凍害の発生を軽減できる

[要約]

水を染みこませた高分子吸水シートでモモの主幹を被覆することにより、樹体表面温度の上昇および低下を抑制し、主幹凍害の発生を軽減できる。

[キーワード]

主幹凍害、樹体表面温度、高分子吸水シート、白塗剤

[担当]

秋田県鹿角地域振興局農林部果樹センター

[代表連絡先]

電話0186-25-3231

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

近年、全国的にモモ若木の凍害が問題となっている。モモは自発休眠覚醒後、樹体表面温度の上昇により耐凍性が低下した後、低温に遭遇することで発生するため、防止策として、日中の樹体表面温度の上昇を抑制する白塗剤塗布が実施されている。しかし、その凍害防止効果は不十分であり、より確実な凍害防止策が求められている。本研究では、温度を一定に保つ能力が高い物質として水に着目し、大量の水を保持することのできる高分子吸水シートを被覆資材として用いた場合の、樹体表面温度の変動抑制効果および凍害発生の抑制効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 高分子吸水シート(4.5mm 厚)に、あらかじめ水を染みこませ、被覆する処理(図1)は、白塗剤塗布および無処理に比べ、樹体表面温度の変動幅を少なくし、特に上昇を抑える(図2)。
  2. 高分子吸水シートをモモ主幹に地際から高さ50cm まで2重に被覆することで、主幹凍害の発生を軽減できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 試験で使用した高分子吸水シートは、幼児用紙おむつ(商品名・マミーポコ、ユニ・チャーム社製、テープ式、Lサイズ)である。
  2. あらかじめ水を染みこませる場合は、バケツ等に水をためて、シート全体を水に浸漬する。浸漬時間は2秒程度(吸水量:約350ml)とする。過度に水を染みこませると作業性が低下するため注意する。
  3. 被覆期間中に、高分子吸水シート内の吸水体がずれて下に偏るのを防止するため、麻ひも等で4か所程度結束する(図1)。
  4. 1重の被覆では、3月中旬以降、高分子吸水シートが乾燥してしまう恐れがあるため、2重に被覆する。

[具体的データ]

(小林香代子)

[その他]

研究課題名
地球温暖化における寒冷地果樹の凍害防止に関する研究
予算区分
県単
研究期間
2006 〜 2012 年度
研究担当者
小林香代子