研究所トップ研究成果情報平成24年度

液状複合肥料地表面灌注処理はリンゴ紫紋羽病の発病を抑制する

[要約]

リンゴ樹の幹回りの地表面に液状複合肥料の希釈液を灌注することによって、紫紋羽病の発病を抑制することができる。

[キーワード]

紫紋羽病、液状複合肥料、地表面灌注処理、発病抑制

[担当]

秋田県鹿角地域振興局農林部果樹センター

[代表連絡先]

電話0186-25-3231

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

紫紋羽病はリンゴ生産上極めて重要な影響を及ぼす難防除土壌病害である。現在、有効薬剤を土壌注入器を用いて土壌中に注入する方法が実用化されている。しかし、処理樹の増加に伴い労力や薬剤費の増大が著しく、予防や治療処理及び再発に伴う繰り返し処理の実施が困難である。そのため、発生園では樹勢低下や枯死による生産性の低下が著しく、生産者から省力的で低コストな防除技術の開発が強く望まれている。そこで、土壌注入器を使用せず、地際部周辺への地表面灌注処理によって発病抑制効果を示す素材を探索する。

[成果の内容・特徴]

  1. 黒ボク土を用いたポット試験において、液状複合肥料10 倍希釈液の地表面灌注処理はリンゴ紫紋羽病によるリンゴ実生及びマルバカイドウの根の発病を抑制する(表1)。
  2. 液状複合肥料10 倍希釈液を地表面灌注処理した黒ボク土は、処理後紫紋羽病菌に対して菌糸伸長抑制作用を示す(図1)。
  3. 圃場試験においても、リンゴわい性台樹に対する液状複合肥料10 倍希釈液の地表面灌注処理は、菌糸付着程度および発病程度ともに、その程度が無処理区より低くなる(表2)。
  4. 以上の結果から、液状複合肥料はリンゴ紫紋羽病に対して地表面灌注処理で発病抑制効果を示す。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本研究で用いた液状複合肥料は、多木尿素有機入り液状複合肥料1 号(登録番号69008、登録昭和60 年10 月25 日、保証成分TN12(AN2)TP12(SP11.5(WP9))TK12(WK11.5)、多木化学)である。
  2. ポット試験に供した土壌は表層多腐植質黒ボク土及び表層腐植質多湿黒ボク土である。試験圃場の土壌は表層多腐植質黒ボク土である。
  3. 圃場における7 年生リンゴわい性台樹に対する地表面灌注処理の範囲は幹回り半径60pである。

[具体的データ]

(浅利正義)

[その他]

研究課題名
リンゴ紫紋羽病の根圏土壌微生物制御による防除技術の確立
予算区分
県単
研究期間
2005 〜 2007 年度
研究担当者
浅利正義
発表論文等
浅利正義(2010)日植病報、76(2):85-91