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リンゴ紫紋羽病に対する液状複合肥料地表面灌注処理の発病抑制要因
[要約]
液状複合肥料の主成分である尿素が、地表面灌注処理後に炭酸アンモニウムと亜硝酸態窒素を生成し、これらが直接紫紋羽病菌に殺菌作用を及ぼす。
[キーワード]
紫紋羽病、尿素、炭酸アンモニウム、亜硝酸態窒素、発病抑制
[担当]
秋田県鹿角地域振興局農林部果樹センター
[代表連絡先]
電話0186-25-3231
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
リンゴの難防除土壌病害である紫紋羽病に対して、液状複合肥料地表面灌注処理は発病を抑制する技術として有望である。本処理は低コストで簡便なことから、今後その実用化が求められている。しかし、本処理の発病抑制要因は明らかでなく、より効果的な処理法を開発するためには発病抑制機構を解明する必要がある。そこで、液状複合肥料の成分をもとに、発病抑制作用に関与している要因を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 液状複合肥料の主成分である尿素、リン酸、塩化カリウムのうち、尿素の地表面灌注処理土壌のみが紫紋羽病菌に対して強い菌糸伸長抑制作用を示す(図1)。
- 液体培地を用いた培養試験では、尿素と硝酸塩は10mg/ml 濃度で本病菌の生育を抑制しないが、炭酸アンモニウムは1mg/ml 濃度で、亜硝酸塩は0.1mg/ml 濃度で殺菌作用を示す(表1)。
- 尿素と炭酸アンモニウムの地表面灌注処理、及び亜硝酸塩の土壌混合処理はマルバカイドウの根の発病を抑制するが、硝酸塩の土壌混合処理は発病を抑制しない(表2、表3)。
- 以上の結果から、液状複合肥料は地表面灌注処理後にその主成分である尿素から生成される炭酸アンモニウムと亜硝酸態窒素が本病菌に対して殺菌作用を示し、発病を抑制している。
[成果の活用面・留意点]
- 本研究で用いた液状複合肥料は、多木尿素有機入り液状複合肥料1 号(登録番号69008、登録昭和60 年10 月25 日、保証成分TN12(AN2)TP12(SP11.5(WP9))TK12(WK11.5)、多
木化学)である。
- 供試した土壌は表層腐植質多湿黒ボク土である。
- 尿素は土壌施用後に土壌中の酵素ウレアーゼによって炭酸アンモニウムに、炭酸アンモニウムはアンモニア酸化細菌によって亜硝酸態窒素に、さらに亜硝酸酸化細菌によって硝酸態窒素に変成する。
[具体的データ]




(浅利正義)
[その他]
- 研究課題名
- リンゴ紫紋羽病の根圏土壌微生物制御による防除技術の確立
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2009 年度
- 研究担当者
- 浅利正義
- 発表論文等
- 浅利正義(2010)日植病報、76(4):275-281