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カキ「平核無」、「刀根早生」は樹上脱渋で機能性成分が増加する
[要約]
カキ「平核無」および「刀根早生」にはスコポレチン、シトルリン等の機能性成分が含まれており、樹上脱渋処理によりスコポレチンを増加させることができる。また、「平核無」では、樹上脱渋処理によりシトルリン、グルタミン等のアミノ酸類の含量が大きく増加する。
[キーワード]
カキ、平核無、刀根早生、樹上脱渋、機能性成分
[担当]
山形県庄内総合支庁産業経済部農業技術普及課産地研究室
[代表連絡先]
電話0234-91-1250
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
メタボローム解析技術により、カキにはシトルリン、GABA に加え、スコポレチンなどの機能性成分が含まれていることが明らかにされている。このため、地域農産物の高付加価値化および加工食品開発等によるカキ産地の活性化を図るため、カキに含まれる機能性成分を明らかにし、その機能性成分を高める生産技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
- カキ果実中の機能性成分分析はメタボローム解析で行った。
- 「平核無」、「刀根早生」の果実のアミノ酸類には、シトルリンやγ−アミノ酪酸(GABA)が含まれており、また、クマリン誘導体の一つであるスコポレチンが含まれている(図1)。
- アミノ酸類の含量は、「刀根早生」よりも「平核無」の方が多く、特に機能性成分として知られるシトルリンは「平核無」に多く含まれる(図1)。
- 「平核無」は、樹上脱渋した果実を適期に収穫することで、果実に含まれるアミノ酸類を増加させることができる。このときガス脱渋した果実と比べて増加量が特に多い成分はグルタミンとシトルリンである(図1)。
- 「平核無」、「刀根早生」では、適期に樹上脱渋処理を行うことにより、果実に含まれるスコポレチン含量を増加させることができる。シトルリン等のアミノ酸類の含量は、樹上脱渋の処理時期が違っても大きな違いはない(図2)。
- シトルリンは収穫適期より遅く収穫した果実に多く含まれ(図3)、スポコレチンは収穫適期よりもやや早めに収穫した果実に多く含まれる(図4)。
[成果の活用面・留意点]
- 分析値は試験年(2011 年)の値であり、果実の成分含量を必ずしも保証するものではない。
- 果皮を除き楔形に縦断したのち液体窒素で凍結した果実切片を、日東ベスト(株)で凍結乾燥、粉末化した後、慶應義塾大学先端生命科学研究所で、アミノ酸類はCE-TOFMS を用い、スコポレチンはLC-TOFMS を用いて測定した結果である。
- 樹上脱渋は、果実1 個につき固形アルコール剤(商品名「ネオヘースタン」)を1/16 に調製したものをポリ袋(0.03mm 厚、20cm×30cm)に同梱して2 日間封入した後、ポリ袋の下部を切って固形アルコールを除いた。ガス脱渋は、一般的なCTSD 脱渋方法に準じて脱渋を行った。
注)
- スコポレチン:オキシクマリン化合物の一種で、1993 年ハワイ大学でノニ(和名:八重山青木)の果実から抽出された。血管拡張による血圧降下作用等があるといわれる。
- シトルリン: スイカの果実等に含まれる成分で、動脈硬化予防や血流改善の作用があるといわれる。
- グルタミン: 非必須アミノ酸の一つで、体内での合成量では不足することがあり、準必須アミノ酸として扱われることがある。
[具体的データ]




(山形県庄内総合支庁産業経済部農業技術普及課産地研究室)
[その他]
- 研究課題名
- 農産物の機能性を高める栽培技術の開発と品種育成
- 予算区分
- 地域イノベーション戦略支援プログラム(都市エリア型)
- 研究期間
- 2009〜2011 年度
- 研究担当者
- 近野広行、明石秀也、及川彰(慶應大IAB)、滝田潤(日東ベスト(株))
- 発表論文等
- 近野ら(2011)東北農業研究64:103-104