研究所トップ研究成果情報平成24年度

局所施用法によるアカスジカスミカメの薬剤感受性検定手法

[要約]

局所施用法によりアカスジカスミカメの薬剤感受性検定を行う場合,供試虫には羽化後4〜11日の雌成虫を用い,液滴サイズを0.20μl以下に設定する。

[キーワード]

アカスジカスミカメ,薬剤感受性,局所施用法,液滴サイズ,雌雄,羽化後日齢

[担当]

宮城県古川農業試験場・作物保護部,中央農業総合研究センター・病害虫研究領域

[代表連絡先]

電話0229-26-5108

[区分]

東北農業・生産環境(病害虫)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

斑点米被害の増加にともない,カメムシ類を対象とした薬剤防除が広範囲で行われている。同一系統薬剤の連用は薬剤抵抗性の発達を招き,防除効果の不良につながる恐れがある。カメムシ類は水田内における発生密度が低く,ほ場レベルで効果不良を判断するのは困難である。このため,薬剤感受性の動向をモニタリングして感受性低下の兆候を把握することが重要である。カメムシ類の薬剤感受性に関する知見は少なく,統一的な検定手法は十分に検討されていない。そこで,斑点米カメムシ類の重要種アカスジカスミカメを対象に局所施用法による感受性検定手法を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 供試虫への薬液の局所施用はマイクロアプリケーター等を用いて胸部背面に行い,薬液のオーバーフローを避けるため,液滴サイズは1個体当たり0.20μl以下とする(図1)。
  2. 雌成虫は雄成虫に比べて薬液のオーバーフローの発生頻度が低く,薬剤感受性は雌雄間に約2倍の差が認められる(図1表1)。供試虫に雌雄が混在すると実験誤差が大きくなると考えられるので,供試虫は雌成虫のみを用いる。
  3. 雌成虫の薬剤感受性は羽化後の日数経過にともなって高まるが,羽化後4〜11日の雌成虫を用いることで日齢による感受性への影響を小さくできる(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本試験において感受性の評価はMEP剤を用いており,他の薬剤では検討していない。しかし,統一的な手法を用いることによって薬剤間や地域間の比較が可能となるので,他の薬剤であっても上記の手法を適用するのが望ましい。
  2. MEP剤に対する感受性は処理後24時間で評価可能であった(表1)。薬剤によって処理後死虫率が安定するまでの時間は異なる可能性があるので,他の薬剤を用いる場合は改めて確認する必要がある。
  3. 図1の試験では,発色試薬としてブロモフェノールブルーを加えたアセトンをろ紙上に置いた成虫に局所施用し,ろ紙に黄色汚点が現れた場合をオーバーフローと判断した。
  4. 表1の試験では2009年に千葉県香取市で採集した個体群を累代飼育し,羽化後4〜10日の雌雄成虫を1濃度当たり30頭供試し,薬液濃度は4段階とした。図1および表2の試験は2009年に宮城県大崎市で採集した個体群を累代飼育し,図1では羽化後7〜10日の雌雄成虫を各液滴サイズ当たり15頭供試した。表2では1濃度あたり10頭×3反復供試し,薬液濃度は5段階とした。累代飼育では餌植物としてコムギ幼苗を,産卵基質としてアワ幼苗を与えた。処理後はコムギ幼苗を入れた透明プラスチック容器(直径5cm,高さ10cm)で飼育した(図2)。飼育時の温度は25度C,日長条件は16L8Dとした。
  5. 用量反応における統計解析はソフトウェアPriProbit(Sakuma, 1998)を用いた。

[具体的データ]

( 宮城県古川農業試験場)

[その他]

研究課題名
大規模水田輪作(普通作物)における環境負荷低減のための主要病害虫制御技術の開発
予算区分
県単
研究期間
2009〜2011 年度
研究担当者
加進丈二(宮城古川農試),渡邊朋也(中央農研)
発表論文等
Kashin J. and Watanabe T. (2012) Appl. Entomol. Zool. (2012) 47 (4): 467-473