研究所トップ≫研究成果情報≫平成24年度
物理的防除資材を利用した食用ぎくのアザミウマ類に対する減農薬防除技術
[要約]
施設食用ぎく栽培において、外張りへ紫外線カットフィルムを使用し光反射資材を織り込んだ防虫網を開口部に展張し、さらに慣行の防除回数を半減した5回の薬剤防除を組み合わせた総合的防除の実施により、アザミウマ類による収穫物への被害を回避できる。
[キーワード]
アザミウマ類、総合的防除、光反射資材、紫外線カットフィルム、食用ぎく
[担当]
秋田農試・生産環境部
[代表連絡先]
電話:018-881-3330
[区分]
東北農業・生産環境(病害虫)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
食用ぎく栽培においてアザミウマ類の発生が多く、収穫物への被害も大きくなっている。発生期間が長いことから定期的な薬剤散布が必要であるにもかかわらず、収穫前日までに使用できる薬剤が1剤のみと限られていることから、収穫物への被害が大きくなっている。また、現地では紫外線カットフィルムが慣行として導入されているが、被害を抑えるには至っていない。
そこで、薬剤の使用回数を削減するとともに、収穫物への被害を回避するため、薬剤と複数の物理的防除方法を組み合わせた総合的な防除技術を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 施設食用ぎく栽培におけるアザミウマ類のハウス内への侵入数は、7月下旬に急増し、8月下旬にかけ比較的多い状況が続き、その後急速に減少する(図1)。
- 紫外線カットフィルムをハウス外張りへ使用し、光反射資材を織り込んだ防虫網「スリムホワイト45」をハウス開口部に展張することにより、アザミウマ類のハウス内への侵入数を抑制することができる(図2)。
- 両資材を併用し、定植時にアブラムシ類を対象に粒剤を植穴土壌混和した上で、さらにアザミウマ類の侵入量が多くなる7月下旬から8月下旬に4回の薬剤防除を組み合わせることにより、収穫物への被害を抑制することができる(図3、表1)。なお、食用ぎく栽培におけるアザミウマ類を対象とした慣行防除回数は10回程度であり、この総合的防除の実施によりほぼ半減できる。
- 光反射資材の展張による収穫物の収量、品質への影響は見られない。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象 食用ぎく生産者
- 普及予定地域・普及予定面積 秋田県内5ha
- その他
- 「スリムホワイト45」は光反射資材(デュポンタイベック)を織り込んだ目合い2mm×7mmの防虫網であり、定植前にハウス開口部に展張した。価格は幅1m×長さ50mで約2万円である。耐用年数は5年程度であるが、効果の持続年数は未検討である。
- 収穫期に使用する薬剤は、収穫前日数の短いものを選択する。
- 試験場所の所在地は、場内は秋田市雄和、現地は横手市平鹿町である。
- アザミウマ類の誘殺数は、ホリバー(黄・青)を各区2カ所に設置し、約7日間隔で調査した個体数の合計値。
- 試験場所における主要種は、場内ではヒラズハナアザミウマ、現地ではミカンキイロアザミウマである。
- 本技術は、施設夏秋どり作型(品種:岩風)を対象とする。
[具体的データ]




(秋田県農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 食用ぎくにおけるアザミウマ類の総合的防除技術の確立
- 予算区分
- 国庫補助
- 研究期間
- 2010〜2012 年度
- 研究担当者
- 菊池英樹、高橋良知